お題短文「３．勘違いするなよ」（ジョシュシベ）
↑こちらのお題サイトさんからお題を借りました。
ツンデレな彼のセリフ
の
「３．勘違いするなよ」
です。
抱きつく程度。ジョシュシベ短文。
３．勘違いするなよ
「何これ、お前の部屋ずるい」
シベリンがジョシュアの部屋に居慣れて来たある日、シーズンではないため古布で覆い隠していた小さな暖炉を見て一言そう言ったのを、今まさにその「ずるい」暖炉の前で暖を取っている彼を見て思い出す。
グレーの毛布をすっぽり身体に巻いて一見グレーの塊のようで、ジョシュアに遊ばれて長い三つ編みにされた赤い髪だけがぴょんとそこから飛び出てその塊がシベリンであることを主張している。
「近寄り過ぎじゃない？」
熱いんじゃないの、と言いながらジョシュアがミルクたっぷりの紅茶の入ったマグカップを片手に塊の少し後方に座ると、舌打ちでもしてきそうな表情で振り返って。
「寒いんだよ、お前が野菜ばっか食わすから」
恨めしそうに言い放つシベリンにジョシュアは相手にする気もないのかにこりとして首を傾げる。
「…肉と寒さは関係ないんじゃない？」
一応答えるが予想どおりの返答が気に入らないのかシベリンの表情はむっとしたままだ。
「関係ある…」
ぼそっと言ってそのまま暖炉を向いてしまった彼を、暫くなんとなく眺めていたジョシュアは、ふと思いついてグレーの毛布の隙間からシベリンの身体へ手を伸ばす。
「な、つめたっ…！」
「確かにちょっと薄くなったかな？」
引き締まった胴回りを炊事後で冷たくなった手先で直で撫で回されてシベリンが慌てて離れようとするが、自分でがっちりと巻いた毛布が邪魔をしてもごもごと動くだけになってしまっている。
「う、薄く…？」
彼的に言わせれば「細くなった」かもしれない事に自覚が無かったのかショックを受けたように聞き返してくるシベリンに、ジョシュアがふっと笑って。
引き締まった事を「薄く」と表現したのがまずかったのだろうが、ほかに言い方がみつからない。筋肉自慢というタイプには凡そ見えないのに何がショックなのかという事すらいまいち分からずに。
「うん、薄くなった」
こことか、とわき腹の辺りをがっちり掴んでシベリンごと自分の方へ引き寄せるとシベリンがわなわなと震えているのがわかる。
「お、お前まさか…俺を貧弱にしようと思って…？」
「え？」
思ってもみない見解に今度はジョシュアが眉を顰める番だ。
確かに弱化が得意分野ではあるが、バランス良く食べさせる事をそこに直結させて考えたことはなかったしそもそもそんな必要などどこにもないわけで。
そうか、そういうこともやりかねないとシベリンに認識されているのか。とジョシュアは顔には出さず納得する。
「傷つくなぁ…貴方のことを思っての事だったんだけど。」
「え…」
少し大げさに肩を落としてみせると予想と違った反応に力を抜いたシベリンが前髪に隠れた顔を覗いてくる。
そこに合わせてジョシュアは口元だけ笑んで見せる。シベリンが自分のこういう機嫌を損ねた時特有の笑い方が苦手だということをよく知っているから。
「…なるほど。そういう方法もあるんだね」
「ジョ、ジョシュア…」
「それって…じゃあさ、逆に筋肉がたくさん付けばオレに抗えると思ってるって事だね」
強めに抱きすくめたまま耳元でそう囁くとしばしの間の後にシベリンがゆるゆると首を横に振る。
「思ってるんだよ…ね？」
「…お、思ってない……ごめん…」
念押すように言ってやればあっさりと謝ってきたシベリンにジョシュアの機嫌はすぐに良くなる。がそれを見せてはやらない。
「締まっただけで痩せたわけじゃないでしょ。後で測れば？」
「い、いい…」
冷たく言われてしゅんとしているはずのシベリンの顔を見てもやらずに一歩離れて座りなおすと興味を失ったようにジョシュアは紅茶を飲み始める。
視線の気配を無視して本を読み始めると暫くして背中に毛布ごとシベリンがくっついてきて。
「何、ご機嫌取りかな？」
「…勘違いするなよ…寒いだけだ」
「ふうん」
「あっ…何…」
するっと毛布の隙間から再度入り込んできたジョシュアの手にびっくりして身体を引こうとするが間に合わずに。
「寒いんでしょ？汗かかせてあげる」
「は？ちょ…っ…やめ」
「悪いと思ってるのならいい声で啼いてね？」
「……！」
毛足の長い絨毯に手早く半端に脱がして転がしたシベリンの首筋に唇を寄せながら、ジョシュアは楽しそうに微笑んだ。
＊＊＊
はやく冬になってーーーーーーー。(暑)
