さびのらいhuのーと

未定暫定腐ってる感じの何かご用心

ここへ漂着された方へ。
こちらはSavi(さび)によるMMORPGTW(テイルズウィーバー)腐二次創作を中心としたブログです。
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お題短文「01・初詣で」(ジョシュシベ)

*ご注意下さい*


□なんでもいい方向け。
□現パロ捏造設定。
□マキシとシベが大学生で同年代。他高校生設定。
□お題の性質上全員性格がバカっぽいです。
□地雷がない方のみ読まれることをオススメします。

 

確かに恋だった

 ↑こちらのお題サイトさんからお題を借りました。

「バカップルへ30題」

 01・初詣で 

ジョシュシベ短文。キス程度。

 

 

 

「初詣で?いかね」
短くそう言われて。じゃあな、なんて言葉もなく通話の終了を知らせる電子音をイヤホン越しに耳にしたジョシュアはふーん。と言った表情で摘むように持っていたスマホの画面を覗き込む。
『そっちに今から行きますね』
短くメッセージを打ち込めば画面を開いたままだったのか既読がつく。
『は?』
『部屋には入れないぞ』
しばしの間の後にそう返ってきたが読むだけ読んでスマホを放るとグレーのコートを羽織る。

「オレ出掛けてくるわ」
寮で同室のランジエの頭だけが出ている二段ベッドの上段の布団を軽く叩けば、ふぁ?と寝ぼけた顔が見える。
「……大晦日だよ、寝てていいの?」
一応そう確認するとランジエはふにゃりと笑って枕を抱きしめる。
「朝からバイトなので」
ランジエが差し出してきたスマホのアラーム時間は朝4時で。
自分から質問した癖にジョシュアの耳にささっているイヤホンからは聴いている曲が漏れてシャカシャカと音を立てている。ランジエはそれを知っていてアラーム時間を見せたのだろう。
バイト部分は聞き取れなかったがアラームを見てジョシュアはふむふむと頷くとおつかれーと緩く手を挙げて。
自分のベッドサイドからスマホと小銭入れを取って、適当に眼鏡を選んでひとつかけるとウォークマンをズボンのポケットからコートに入れ直しジョシュアは急いで部屋を出た。


***


寒空も気にならないほど寮から近い距離にあるアパートのドアの前に立ち、ジョシュアは控え目に2度ノックしてみるが中に居るはずのシベリンは出てこない。
ドアの真横にある風呂場の窓からは中に電気がついているのがはっきり分かる。

ーーピンポンピンポンピンポンピンポン
狭いアパート。ベルを鳴らしまくれば両隣の迷惑になるからシベリンがドアを開けるしか選択肢が無くなる事をジョシュアは知っている。
案の定そう時間はかからずにドアが少しだけ開いて中から不機嫌そうなシベリンの顔が見えた。
「帰れ」
口の動きを見たあとジョシュアは愉しそうに口元を綻ばせながらシベリンの事を頭の上からつま先まで観察する。
昨日までバイト漬けで今日慌てて大掃除でもしているのだろう。少しよれっとした感じでふくらはぎまで裾がめくり上げられた黒いパジャマ姿のシベリンはいつもは結んでいる髪を降ろしたまま首にはタオル、袖を捲くった手には泡のついたままのスポンジが握られている。
ジョシュアのイヤホンに気付くがいつもの事。
「掃除してんだよ、帰れ」
スポンジを持った手を目の前に持ってきて見せつけると、肘で押すように素早くドアを閉めようとした。
「いたっ!」
ジョシュアは咄嗟にスニーカーのつま先を滑り込ませてドアが閉まるのを止めた上で、手を挟んでもいないのに手を抑えて俯く。
「え、大丈夫か?」
思わず振り返ってドアを開けた所でシベリンを押し倒す勢いで中へ入り込む。泡のついた手でジョシュアに触るのは悪いと思っているのか半端にホールドアップした状態で玄関兼台所の床に寝転がったシベリンを見てジョシュアはくくっと喉を鳴らして笑った。

「…っ、おまえ今の…!」
手など挟んでいないと遅ればせながら気づいてももう遅くて。
「手ぇ見せてみろよっ」
苛ついた顔で手のひらを隅々まで眺めるシベリンの頬をつっついてやると暖房もつけずに掃除をしていたのかひんやりと冷たい。
「なんともないなら帰れっ」
「んー?なぁに?上がりますね」
耳からイヤホンを外してポケットに入れ込むとコートごとシベリンにふわりと放り投げる。
「あっ、ばか泡が…」
ぶつぶつと文句を言っているシベリンを気にもせず部屋を見回すと掃除していたのは狭い流しだったのか、部屋はキレイなふうに見えて。
「なんだ、掃除終わってるじゃないですか」
スチール棚2つに板を差し込んだような簡易デスク前の椅子がジョシュアの定位置で、敷かれているクッションのカバーが変わっていることで洗濯もしまくったのかと予想する。どすりと沈むように座り込むと後方から何か怒声が届く。
椅子ごとぐるぐる半回転しながら机の上を物色する。ガム、ケースに入っていない音ゲーのゲームカード、書きかけのレポート、バイトのシフトの紙、モバイルバッテリー、夏に撮った浜辺での写真。
数枚めくれば自分だけが写った写真がぺらりと見えて、ジョシュアはクスリと笑う。
「色々勝手に見んな」
声に振り向けばこちらに背を向けて着替えている。
「ねー、初詣で行ってくれるんですか?」
「は?行かねーよ」
甘えたように言って見るがじろりと睨まれて。
「えー、オレが来たから着替えてるの?おかまいなく♡」
そう言ってにこりと笑えばシベリンの首元が少し赤くなる。
「濡れたから変えてるだけだっ」
床に座り込んで靴下を履こうとしている背後に近寄って顔を覗き込んでみるとやっぱり少し赤くなっていて。
「シベリンさん、キスしよ?」
しない、と言いたかったのだろう開きかけた唇はすでにジョシュアのそれと触れていて。押し返してこないのをいいことにぴったりした黒いシャツの隙間に手を入れようとするとぺちりと叩かれる。
「腹減ってんだよ…なんか作る」
「オレ鍋がいいです」
「……」
嫌そうな顔に、すでに冷蔵庫に材料があることを察して。自分が来る事前提であれこれ準備しておいて、電話では来るなと言うシベリンにこみあげる笑いが止まらない。
「なんか暇つぶしてろ」
「これ新しいやつでしょ?やっていい?」
机に転がっていた音ゲーのカードをひらひらして見せるが振り返らず生返事だけが返ってきた。


***


「ねー、初詣で行きましょうよ。除夜の鐘聞く?」
ポン酢に浸したキノコを真横に座っているシベリンの口元に運ぶとあ、と口が開く。
「ひははい」
「なんでぇ?」
「…大学の知り合いに会ったら面倒だろ」
「オレと歩くのがやなの?」
「そんなんじゃねー」
鍋をつまむ間ビールを二本開けたシベリンは素の時よりも少し優しい顔でジョシュアの方を見てくる。
「高校生でーす☆シベリンさんの彼ピッピでーす☆なんてオレ言いませんよ?」
ジョシュアのおどけた言い方にぶっ、と口に運びかけていたビールを吹き出す。
「あのクソ眼鏡を警戒してるの?」
いつもタバコを咥えてシベリンの隣に居るソリの合わない茶髪の男を思い出してジョシュアが苛立つ。
「おまえだってクソ眼鏡だろ」
「伊達です。ファッションでーす。かわいいでしょ。」
流し目で舌を出してみせるとビールを嚥下するゴクリという音がやたらと大きく響いた。
「もう、初詣で~」
「なんでそんな初詣で行きたいんだよ」
「逆に聞くけどなんで行きたくないんですか…あ!」
「あぁ?」
「初詣でなんか行かずにオレとヤリたいんですね」
「…は?」
眼鏡のレンズの向こうの彼は心底「は?」という顔をしてこちらを向いているが、こんな事で怯んでいては初詣でにはいけない。
「そーでしょ?なんだー言ってくれればいいのにー」
「ち、ちが…何言って…」
「何が違うの?じゃぁなんなんですか」
「ジョ、ジョシュア…」
眼鏡を下にずらしてじっと見つめてやるとゴールドの瞳がたじろいて揺れている。
「108回鐘聞くのとオレに108回喘がされるのとどっちがいいんですかー?」
三本目のビールの缶を取り上げてやんわりと押し倒すと待て待て、とシベリンが慌てたような声で言う。
「シベリンさんの腰立たなくなるくらい頑張っちゃいますよ?オレー」
「う…」
「抱き潰されるか初詣でか選べまーす、オレ優しくない?二択もあんの、ね、どうする?」
「………初詣で…」
「なにそれー。初詣でのほうがマシって事ですか?」
「ど、どうすりゃいんだよ!」
真っ赤になってぶすっとしているシベリンにぺちっと頭を叩かれて、ジョシュアはクスクス笑った。
「あー、でもシベリンさん抱く事考えちゃったらなんかヤる気出ちゃいました」
ほんの数秒前まで無邪気に笑っていたジョシュアの目が欲を孕んで自分を見つめていることに気づいてシベリンが驚く。
「え…ちょ、なんでスイッチ入ってんだよ…盛るなっ…」
「ちょっとしたら初詣で行きましょ?」
「…ぁっ、何が二択だよ結局一択じゃねーかこんなの…!」
「ちょっと入れるだけだからー」
「ばっかやろう…」
罵りつつも背中に手が回ってくる感触にジョシュアはニコリとして、周りに転がっているビールの缶や皿、ゲーム機を適当に避難させてついでにシベリンのスマホの電源をしれっとオフにする。だいたいこういう時はジョシュア曰くクソ眼鏡が何か察知して電話をかけてきて、律儀なシベリンが出てしまうのだ。
「…?なにやってんだ?」
「んー、時間見ただけです、あ、待てなかった?」
「…知るかっ」
ジョシュアはむくれて顔を反らす恋人の首元に笑いながら顔を埋めて、さっきは叩かれて触れなかったシャツの内側に改めて手を差し入れた。