さびのらいhuのーと

未定暫定腐ってる感じの何かご用心

ここへ漂着された方へ。
こちらはSavi(さび)によるMMORPGTW(テイルズウィーバー)腐二次創作を中心としたブログです。
イラストや小説のみご覧になりたい場合はページのどこかにある「カテゴリ」から選んで、CP表記に注意して自己責任でどうぞ。

あかとあおのゆううつ(短め完結)

ジョシュシベ・腐(R18)

 

 

 

 

 

「明日からの二連休、俺居ないからな」
榛色のカーテンが風に揺れるたびに顔も見ずにそう言ったシベリンのあかい髪が黒っぽく見えたり苺のように鮮やかに輝いたりコントラストを繰り返す。
自分に背を向けたままクローゼットから服を取り出して鞄に詰める恋人をジョシュアはじっと眺めていたが、ソファーから立ち上がると側に寄りシベリンの髪を纏めている紐をしゅっと引き抜いてみる。
俯いて作業をしていた所でそんな事をされれば一気に解けて垂れてきた髪が視界の邪魔をして。
「なにすんだよ…」
シベリンはむっとした声音で呟きながらそれでも振り返りはせずに服を小さく丸めている。自室だからかいつもより強気な様子にジョシュアはくすりと笑って。
あかい髪を一摘みしてくいっと引くと不機嫌そうにだが手を止めて振り向いた。
「居ないってどうして?任務か何か?」
「…いや…別になんでもいいだろ」
ジョシュアの方を向いていると外から差し込む陽が目に入るのか眩しそうに目を細めて、また鞄に視線を戻してしまう。
「私用かどうかくらい教えてくれてもいいんじゃないかな」
「……私用」
私用と聞いて、ジョシュアの瞳が何か面白がっているように煌めく。前々から試してみたいがやっていなかったことを思い出して口の端で笑って。
「じゃあオレは前からやってみたかったことでもやろうかな」
「…?」
「やってもいい?」
「べつに、好きにしろよ…」
用意に忙しいシベリンはジョシュアの言う『やってみたかったこと』について興味が無いのか特に確認もせず生返事を返す。
それが自分に何をもたらすのか微塵も考えの及んでいない様子を楽しんでいるかのように薄く笑って、ジョシュアは少し前に出されたマグカップにティーバッグが入ったままの紅茶を口に運んだ。

***

いつものようにジョシュアの部屋で夜を過ごした夜明け、シベリンは身体を弄られる感覚に目を覚ました。
「ん…んっ」
寝ている時にあちこち触られているのはいつもの事だから放っておこうと思ったがいつもとは違う、まるでこれから抱こうとしているような触り方で、朝から出かけることを思い出して慌てて身を捩る。
「あ、や…めろよ…出かけんだから…っ」
身体に嫌という程馴染んだジョシュアの手が優しく這い回るだけで火がついてしまいそうな自分にうんざりして、シベリンはとにかくジョシュアから離れようと起き上がりベッドから降りようとするが、同時に二の腕を強く掴まれ引き戻され、顔からベッドへ突っ伏すように転がった。
「…っ、なん…」
何か言ってやろうと直ぐに体勢を整えてジョシュアに目線を合わせたシベリンだが、見た途端詰まったように口を噤む。
まだ暗い中アロマキャンドルの僅かな灯りに照らされたジョシュアの手に手錠が握られているのを見てしまったから。
「オレは今から…これをシベリンに嵌めるよ」
信じられないと言うような顔で自分を見る恋人にジョシュアは特に何の感情もなさそうに品の良い笑顔を見せ、手錠を揺らして金属音を聞かせながら説明する。
「い、嫌だ…俺、出かけるって…」
後ずさるがすぐに壁に背がぶつかり、空いた隙間もすぐにジョシュアに詰め寄られる。
「好きにしろって言ったよね?まぁ、出かけてもいいよ。出かけられるのなら。」
「うわっ」
壁を背にしていたはずが、腕を引かれ一瞬で頬にベッドの柔らかいシーツの感触を感じて。背中の中央に重みと痛みでジョシュアに膝で乗られているのだと分かるのに数秒かかる。
「や、めろって!」
「ほら、大人しくして。痛くするよ?」
「あっ…く」
腕を捻る寸前まで後ろへ持っていかれ、抵抗虚しくカチャリと手錠の嵌った音が部屋に響く。
「出かけるって…っ、あ、や…」
呆然とした声音で呟くシベリンをベッドの上で起き上がらせると首筋に舌を這わせる。
何度舐めても毎回が初めてそうされるかのようなびくりとした反応に気を良くしてなにか喋ろうとしていた唇を手で塞ぎ耳朶に甘く噛み付く。
「んんっ、ふ…」
「どこにも行かせない」
ガチャガチャと手錠を鳴らして藻掻く恋人を愛おしそうに抱きしめて、ジョシュアは口元だけで微笑んだ。

***

「おはようマック君」
連休の朝の食堂はがらんとしていてとても静かで、ジョシュアは一人優雅に朝食を取っていた。
「あれ、今日あいついねーのか」
珍しくルシアンなしで食堂まで来たのか、髪がボサボサのマキシミンが前の席に座ってくる。
「そっちこそ」
「こっちはセットじゃねーぞ。…ルシアンは面白い賭け事があるとかでどっかいったわ」
なみなみと注がれたコーヒーを一口啜ってマキシミンがじっと自分を見てくることで、自分が質問にまだ答えていなかったことを思い出す。
「部屋にいるよ」
「は、閉じ込めてるの間違いだろ」
「一般的にはそう言うかもね」
茶化して言ったつもりが思わぬ返事にマキシミンは眉を顰めて首を傾げた。
「おまえさー…そんなんだと嫌われんぞ」
「なんで?」
「なんでって…合意なのかよ、それ」
「最終的に合意になるから大丈夫」
きれいに笑んでパンを口に運ぶジョシュアを見遣って、マキシミンは半笑いで溜息をつく。
「あいつとはそりが合わねーけど…同情するわ」
「ちゃんと食事も持っていくし、問題ないでしょ」
ーーお前のその考え方に問題が、と突っ込みたかったが面倒くさくなって、マキシミンはやれやれと飲みかけのコーヒーに忘れていたクリームを流し入れる作業に集中することにした。

***

ドアを閉めてベッドの上を見ると出かけた時そのままの状態でシベリンが横たわっていた。仰向けに寝ると後ろ手につけられた手錠が痛いからかうつ伏せに近い横向きでぐったりとしている。
「ただいま」
頭のすぐ側に腰掛けると、起きてはいたのかゆっくりと重そうに瞼を開けた。金の瞳は虚ろで、ジョシュアの方を向く元気もないといった様子に疲れさせた張本人はクスリと笑いながら自分の指を舐めると、シベリンの乱れた寝間着の隙間に手を滑らせる。後ろに挿し入れられた指の感触にシベリンはびくりと反応すると、ゆるゆると頭を振った。
「ジョシュア…っ、あ、あ」
朝方から散々攻められて、やっと終わったと思っていた行為の再開に震える身を捩る。
どろどろに解された中の甘い場所だけをしつこく嬲ればあっという間に身体に火がついてかたかたと震え出す。そのまま黙って弄り続けると、びくりと身体が揺れてがしゃりと手錠の鎖が突っ張った音がした。
「あ…っ、は…」
「あれ、今イった?」
言いながら手は休めず顔を覗き込んでくるジョシュアをシベリンはこまかく震えながら涙の溜まった瞳で見返してくる。
「も、もう…」
『無理』まで言えずに閉じようとする脚を無理やり開かせると溜まっていた涙がぽろりとシーツに落ちた。
「オレを拒まないで」
ぐりぐりと知り尽くした内部を嬲れば面白いようにシベリンの身体が跳ねて戦慄いて。
「うあ、あ…や…」
一度こぼれた途端止まらなくなった涙がシベリンの頬に伝う。
「いい顔してる…」
ぐったりとしている下半身を抱き起こすと己の昂りを取り出しシベリンの後ろに指と入れ替わりにそっと含ませてみる。先端がぬぷりと抵抗無く飲み込まれたのを確認して、思いついたようにシベリンの前の根本をきつく掴むと、一気に奥まで突き入れた。
「…?!あああっ…」
ぐずぐずに溶けた身体には過ぎた刺激に押し入られた衝撃で放ってしまった、と思ったがきつく握られたそれからはなにも出ておらず、それでもまるで放ってしまったかのような身体の熱の暴走に視界がぐらぐらする。
「ふ、ん、ぅあ…」
「すごく熱いね…」
シベリンは自分勝手に揺さぶられ、律動に合わせて金属音を発する手錠の硬さを手首に感じながら身体と同じく溶けた頭でどうしてこんなことになったのか考えていた。
早朝寝ている所に悪戯を仕掛けてきたジョシュアをそういう気分ではなかったからやめろと突っぱねて。シベリン的にはそれしか思い当たる節がない。ジョシュアがどんな形にせよ拒まれるのを嫌がるのをわかってはいたが、それがどれほどのものか理解はできていなかったのかもしれない。
過ぎた快感に自分の身体を制御できず、うまく抜ききれない力のせいで手錠が食い込んで痛む。
「はずし…ジョシュア…あ、うぁ」
うっすらと汗ばんだ背筋の窪みを眺めて辿っていくと手錠の輪の形を表すように薄く傷ついた手首が見える。
「んー、どこにも行かない?」
「んっ、ん、あぁ…え…?」
「どこかに出かけるんじゃなかったの?」
「あっ、あ、んんっ」
「シベリン、聞いてる?」
相変わらず質問しながらも答えさせる気がないようで、攻める動きを緩めず話しかけられるシベリンは何を聞かれているのかもよく理解できないまま喘ぐしか無い。
「きもちよくてわからない?」
ぶつけるように抽送しながらシベリンの昂りの根本を戒めていた指を少し緩めて軽く扱いてみると丸まっていた背中が弓なりにしなり、肩が震えて手の中のそれが脈打つ感触にジョシュアはぺろりと自分の唇を舐める。
今日もう何度目になるのか、逐情した衝撃で痙攣したように戦慄く身体を休める間もなく突き上げられて、シベリンはひと突きされるごとに頭の中が白くぼやけていくように感じられた。
「んっ、ん、ぅ…」
全身にどろりとまとわりつくような快感に勝手に涙が溢れて零れて。握りしめる事も出来ずに開いたまま震えるシベリンの指先を見てジョシュアは愉悦に塗れた瞳を輝かせる。
「後でまた聞くね…」
身体の奥にぐっと押し付けた自分の昂りから熱いものが迸り、その感触に自身から白濁を滴らせながら身悶えするシベリンの背中を愛しそうに見つめると、ジョシュアはそのまま覆いかぶさって首筋に口付けた。

***

暗転した意識が沼底から浮いてくる気泡のようにゆっくりと動き出す。目を開けた筈が真っ暗で、シベリンは目元に感じる布の感触に自分が目隠しをされているのだと直ぐに気づいた。
「……」
目元に触れようと反射的に手を動かすが、両手を戒める冷たい輪はそのままのようで。
暗い視界と重い金属音が自分の心までを締め付けているように感じられてシベリンは小さく息を吐いて項垂れる。
「…ジョ…シュア…」
掠れた声で部屋の主に呼びかけてみるが返事が無い事にシベリンの心拍数が跳ね上がった。
暗闇はよく魘されている悪夢のイメージに近くて苦手なのを、ジョシュアには言っていなかったとぼんやり考える。
「ジョシュア…!」
ーー朝から散々自分を嬲った相手の名を縋る様に呼ぶなんて、どうかしてるーー

「シベリン?」
背後でドアの閉まる音がしたが、それがどのドアか分からず、外から帰ってきたのか洗面所から出てきたのか定かではないがとにかくジョシュアが居る事に早鐘の様に鳴っていた心音が少しだけ穏やかになる。
「ジョシュア……っ?」
見えていないのに突然頬に触れられ、驚くそのまま隠せずにびくりと竦んでしまったのがお気に召したのか、ジョシュアがふ、と笑う息遣いがしんとした部屋に響く。
「目隠しするだけでそんなに名前を呼んでくれるんだ」
「んっ…」
頬に触れていた指がするりと口内に入ってきて好き勝手に動く。
「いつもきもちいい時しか呼んでくれないのに。」
「ん…んぅ…ぐ」
喉奥まで指を入れられ軽く咽せると同時にジョシュアは口から指を引き抜いて、寝転がっていたシベリンを上体だけゆっくり起こすと肩を抱いてきた。
「…ドキドキしてる、もしかして目隠しが怖いの?」
ここで嘘をつけば「怖い」と答えるまで『怖くなる事』をけしかけられるだけだと身をもって知っている。
いつものシベリンならば「知っている」から渋々答えるわけだが今日はもうそんなパターンの事を考える心の余裕も矜持も粉々に散って何も無く。自分では拭いきれない恐怖感をどうにかしてほしくて、考えるより先に肩を抱くジョシュアに擦り寄ってしまっていた。
いつもよりだいぶ素直、と言うよりも必死な様子にジョシュアは一瞬目を丸くしたがすぐに心中を察して。夜中も寝顔見たさに淡い灯りをと小さなキャンドルを灯していたりして、思い返せばシベリンと暗闇で過ごしたことなどなかった。
「貴方を閉じ込める時は明るい所にしないといけないね」
いつもは凛としている背筋を丸めて自分の胸元に顔を埋めてしまっているシベリンの髪を優しく撫でながらそう言うと、小さく首を振った。
「オレ前言ったよね、視界を奪って自由を奪って、閉じ込めておきたい…って。ほんとうは、いつでもこうしたいって思ってるし、やろうと思えば今日のように簡単にできること、忘れないで。」
囁きながら顎を掬って上向かせたシベリンのかさついた唇の輪郭を指で撫で、そのついでとでもいった風にするりと目隠しをとってやる、いつのまに夜になったのか、窓の外はもう真っ暗でいつものように灯りがついていない仄暗い部屋をシベリンはちらりと見て動揺する。
「暗いね」
どちらかと言うと自分と距離を取りたがるシベリンがぴったりとくっついている事にジョシュアは薄く笑って目蓋に口付けて。
「オレにくっついてると怖くないでしょ」
正面から抱きすくめて、シベリンの後ろ手に繋がれた手首の部分をするりと触り手探りで手錠の鍵を解いてやる。1日中拘束されていたからか両腕は自由になっても力無くだらりとしている。
「怖がりで…脆くて…貴方はオレが居ないともう1人で立ってもいられない」
普通ならば、違う相手ならば、茶化して否定してしまえるそんな言葉もジョシュアが言うと『そうなのかもしれない』という気になってしまう。何も言い返せずぼんやりと自分に体重を預けているシベリンをベッドに横たわらせると上から覆いかぶさって首筋に軽くキスをする。
「また一人で何処かに行くなんて言ったら…今日よりもっといい事しよう」
「っあ…」
チリッとした感触に、前のように歯で小さく噛まれたのだと気づく。
――そういやそんな事言ったっけ…?――
疲労とまだ残る暗がりへの恐怖心で正常には回っていない頭でぼんやり考えて、ジョシュアの方を見て考える。こういう時、なんていうんだっけ…。
「も、もう言わない…」
「うん、後は?」
「……」
「ちゃんとオレの言うこと聞く?」
だらりとシーツに投げ出された薄く傷の付いた手首をそっと触るとシベリンがぴくりと反応する。
「っ…聞く…」
ジョシュアに両手首の傷を確認されながらおどおどと答えてくるシベリンを見て、ベッドの上じゃ素直なのにな、と含み笑う。
「シベリンはすぐ忘れちゃうから…何度でも教えてあげるよ」
「あ…」
「貴方が誰のものか…じっくりね」
体力は人一倍ある方だがそれでも1日散々弄られて限界の身体に舌を這わされて、力無く目線を合わせてきたシベリンの金の瞳に諦めの色が滲んで揺らぐのを間近で見たジョシュアは含み笑ってあかい前髪を掻きまぜた。
「ま、今日はもう勘弁してあげる」

***

「はい、これでいい」
シャワーを浴びさせ、ソファーに座らせて傷の付いた手首に薄く軟膏を塗って、両手揃えてシベリンに見せてやる。塗られた本人は泣きすぎて赤くなった目を瞬かせて手首をしばし見てからジョシュアをぼうっと見詰めてきた。
ーー全然頭が回ってない顔してるな。
疲労でぼんやりしている顔にジョシュアが軽く笑んでキスをするとすぐシベリンから離れて立ち上がる。
「いつも夜使ってるキャンドルを切らしちゃって、買いに行ってくるよ。」
「え…今から…?」
「眠いでしょ、眠らせてあげようか?それとも一緒に来る?」
冗談交じりに言った後で疲れてて無理だろうけど、と付け加えかけたジョシュアにシベリンはぼんやりしたまま行く、と答えて。普段なら抱き潰されて疲れ果てるとこんな姿誰にも見せられない、と大人のプライドが許さないのか外に出たがらないのに本当に頭が回っていない様子だ。
気付かずとは言え、目隠しで暗闇に置いたことで必要以上に怖がらせてしまったかな。とジョシュアは自嘲気味に肩を竦める。
「うーん、まぁこの時間なら誰とも鉢合わないかな?」
――ま、そういう時に限って誰かと会うものだけれど、オレは構わないしな。
立ったものの猫背気味で今にも寝てしまいそうなシベリンを寝巻きから着せ替え、カーディガンを羽織らせると背中を押して出かけることにした。


「さ、お店ついたよ。すぐに来るからシベリンはここに座って待ってて」
ケルティカの雑貨屋の前にある明るい街灯の下のベンチにシベリンを座らせて、結っていない為俯いた顔を覆い隠すようにさらさらと前に流れるあかい髪をかきまぜるとジョシュアは店内に入る。
普通のキャンドルにアロマキャンドル。これと決めたものを手に取り会計を済ませていたジョシュアはふとショウウィンドウの内側からベンチを確認して。
「あ」と音量は出なかったが思わず口から出てしまった。

夜風に靡く闇夜と同じ色のロングストレート。ボリスがベンチに座るシベリンの前に立っていた。
「シベリンさん?」
ボリスは訝しげな顔で2度目のシベリンの名を呼んだ。遠目から見かけて近寄って、一度呼びかけたが返事がない。自分の髪と同じようにさらさらと風に煽られて揺れるあかい髪。ボリスは他にこんな髪色をした人を見たことがないので今この瞬間までシベリンその人と疑わなかったわけだが。
ーーシベリンさんはいつも後ろで結ってるし、まさか違う人なのか?
違ったとしてもこんなに寄って呼ぶだけ呼んで去っていくのも不自然な気がするし、こんな場所でこんな時間に俯いたまま動かないのも気になるしで、ボリスは数秒考えを巡らせるとそっと俯いたシベリンらしきその人の肩に手を乗せてみる。
「シベリンさ…」
頭の位置に高さを合わせてベンチの前に屈んで様子を覗き込んだ瞬間ボリスの頬が真っ赤に染まった。
目の前で俯いていたのは確かにシベリンだった、シベリンだったのだが、あかい前髪の隙間から覗いた瞳はボリスを認識してはおらず不安そうに揺らいで、酷く泣いたのか目の端が赤くなって。一人置き去りにされた子供のように口元をむくれさせて。視線を下にずらすと薄っすら傷の入った両手首が所在なさげに膝の上に乗っている。
想像してもみなかったシベリンの様子に肩に置いた手に力が篭もる。日中の彼の様子からは凡そ想像の付かない扇情的な顔に、思わず彼の恋人との秘め事を勝手に想像して頬が熱くなり同時に初めて目の当たりにするシベリンの酷く弱々しく見える様を、どうにか慰めてあげたくなって。
「一日中啼かされていたんですか?」
前に垂れている髪を掬って耳にかけてやりながら顔をさらに覗き込むと、シベリンがぼんやりと視線を合わせてきた。
「ジョシュアの前では、いつもこんなに無防備なんですか…?」
返事はなく、ボリスだと分かっているのかも怪しい様子のシベリンが泣き疲れて潤んだ瞳でこちらを見てくるのにどきどきと胸の鼓動がはねて、思わず屈んでいた体勢から少し伸びてシベリンを胸元に抱き込んでしまった。
「……っ?」
一拍置いてシベリンの肩がびくりと竦み、俯いたままやんわりと胸元を押し返されて。
「――シベリンさ「はい、そこまで」
背後から冷たい声でぴしゃりと言われる、聞き覚えのある声にボリスが振り向くと声音に反していつものように柔らかく笑んだジョシュアが立っていた。
「躾がなってないな。これはオレのものだよ」
ボリスの前に割り込むようにジョシュアが滑り込むと、シベリンの後頭部を片手で抱き込んで自分の体で隠してしまう。
余裕のあるデモニックの笑みと、黙ってされるまま抑えられているシベリンの態度が何よりも彼を肯定していて己の杞憂に恥ずかしくなり、ボリスの胸がちくりと痛んだ。尊敬混じりに慕っていた年上の人の、見てはいけなかったはずの表情を勝手に見てしまった後ろ暗い気持ちが胸の奥底で静かに爆ぜる。
「若様、こんな所に居たんですね」
嫉妬でも恋心でもないようで、嫉妬にも恋心にも近い。チリチリとした行き場のなく判別のつけ難い感情に心を掻き混ぜられぎゅっと自分の上着を掴んだボリスの手を包むように手が添えられ、それが自分の恋人のものだと知り詰まっていた息をやっと吐き出す。
「どうしたんですか急に」
言いながら目の前のジョシュアに気付いたランジエが軽く会釈して挨拶する。
「悪い…シベリンさんが遠目に見えたからつい」
急に側から居なくなったことを謝罪するように見せかけて、ランジエからは死角に位置しているジョシュアの後ろに隠されたシベリンの存在を仄めかす。
「えっと…こんばんは?」
ランジエがジョシュア越しに挨拶するが返事はない。
「シベリンは今ちょっと調子が良くなくて。」
後日のシベリンの為に一応フォローしておく。
「あ、そうなんですね。お大事に。」
ランジエはジョシュアの言葉をストレートに受取り、心配そうに笑んで見せる。ボリスはそもそもシベリンの調子が何故良くなくなったのかを知ってしまっている為そんなジョシュアの適当なフォローに対して猜疑心を露わにした目線を送ってきたが、自分が口を挟められる状況ではないことを分かっているのか薄い唇を噛んだ。
ジョシュアが振り向いて腕の力を緩め反応のない恋人の顔を伺ってみると眠気で限界なのかぼうっとどこか見ているようで見ておらず心ここにあらずといった風で。頬を指先で軽くつまんだ後撫でてみると鼻先を服にうずめてきた。
「シュア…」
隠されていて顔は見えないがジョシュアを呼ぶ掠れた甘い声は確かにシベリンの声で、ジョシュアの正面の二人が何故か赤くなって。
「わかった。帰ろうか。」
道中誰かに会っても構わないと考えていた筈だが、予想したラインを遥かに越えて自分にべったりなシベリンの様子(実際には眠気によるものが大部分なのだろうが、目の前で赤くなっている2人にはわからないだろう)をもっと見せつけたい反面今すぐに隠してしまいたい相反する気持ちに溜息をつく。よくよく考えればシベリンがこうなるほど追い詰めたのもここまで連れてきたのも自分の所業であるわけで、腕にかけたキャンドルの入った紙袋をチラリと見て、これが無かったのがいけなかったのだと数日前買い足さなかった自分に責任転嫁して。
「じゃあオレ達はこれで」
上着の内ポケットにワープカードがあるのを確認したジョシュアはふとさっき店内から見た光景を思い出して何か思案する。
すぐ目の前で居心地悪そうに佇んでいる二人の方に向き直るとふわりと笑って見せて、次の瞬間ランジエの制服の襟を強く掴み上げる。
「えっ?うわ…」
急な事にランジエが前のめりに体勢を崩し、しっかりと手を繋いでいたボリスもつられて引っ張られ恋人の背中に顔からぶつかる。
「いった…」
鼻を打ったボリスが顔を押さえながらランジエとジョシュアの方を仰ぎ見て、2人の唇が触れているのを目視してしまい時が止まったように固まってしまう。
「…っ?」
一瞬の事で何が起こったのか把握できないランジエは、あまりのジョシュアの近さにキスをされたのだと気づいて。
目を開いたまま呆然としているランジエの唇をそろりと舐めて離れると、ジョシュアにしては珍しく鋭利な目付きで自分を睨むボリスを見遣る。
「文句は言わせない、君はこれと同等の事をしたのだから」
「……」
「何か勘違いをしていたようだけど、もうわかったでしょ?シベリンはオレじゃないと駄目なんだよ」
優越を隠しもしない自信に満ちた笑み。畳み掛けるように痛い所をつかれ、赤くなって何も言えずに俯く恋人とそれを睨め付けるジョシュアを交互に見て、話の見えぬままとばっちりを受けたランジエの方が何故か慌てている様子に溜息をついて、掴みあげた襟を解放してやる。
「大事だからって甘やかしすぎ」
「え、それはどういう…」
「何をしたのか本人から聞いたら?次はキスなんかじゃ済まないからね」
ワープカードを軽く振りながら悪戯っぽく笑んで、シベリンの肩を抱いたジョシュアは消える寸前そう呟いた。


ジョシュアの纏うラベンダーの香りがまだ鼻先に残っている気がしてランジエは空気を切るように勢い良くボリスの方に振り返る。
――何をしたのか?
普段のボリスであれば、さっきのようなことがあればあのジョシュア相手でも激怒して噛み付いていくはずなのに。俯いて唇を噛む様子に追求するべきではないと判断してぎゅっと握られた手を答えるように包み直す。
「シベリンさんに抱きついてしまった」
手持ち無沙汰に細い白い指をやわやわと触っているとボリスがぽつりと話し出す。
ーーん…?抱きしめられたわけではなく、抱きついた…?
内心穏やかではないが黙って続きを待つ。
「ジョシュアがシベリンさんを手酷く扱ってるのが許せなくて…俺…でも、シベリンさんが好きとかそういうのじゃなくて。でも泣き腫らして一人で座ってて…可哀想で…どうにかしなきゃって…」
「そうですね」
断片的だが凡そどんなことがあったのかなんとなく把握する。ボリスのことだから、額面通り、言葉そのまま。他意なく抱きついてしまったのだろう。いつも冷静なボリスが明らかに動揺して自分の手を握りしめてくることに愛しさが募って、会話の内容がどうでも良くなりそうなのを堪えてなんとなく相槌のように同意してみる。
「でも…そんなの俺の勘違いだった…俺の知ってる恋愛と、ぜんぜん違うんだ」
兄のように慕っている相手の想像もしない恋愛事情を垣間見てボリスは心乱されているのだとランジエは軽く溜息をつく。愛情ではない「好き」なのだろうが、それは危うく恋心すれすれのもので、真っ赤になって俯いているのはまるで失恋してしまったような気分を味わっているから。
さっきから自分の顔を見れないのは、まるで失恋してしまったような…そうではないのだが浮気でもしたような気持ちに後ろめたさがあるのかもしれない。
「俺、いけないことをしてしまったのか?ジョシュアが、『躾がなってない』って」
やっと顔を上げたボリスは泣きそうなのかと思っていたがそんなことはなく、まだ頬は赤かったが凛とした瞳にランジエはくすりと笑ってみせた。
「ジョシュアも若様が邪な気持ちで抱きついたのだとは思ってないと思いますよ」
「で、でも」
「恋人同士のことは当人にしかわからないですし、正解もありません。今後気をつければいいのでは?…若様に納得がいかなくても。」
「…納得はしてない…あんな…」
再び俯きそうになった恋人を、ランジエは優しく引き寄せて抱きしめて、直ぐに引き剥がす。
「…そろそろ話題を変えませんか?」
短い抱擁にボリスが不満そうにランジエを見遣ると、熱の篭った朱い瞳が自分を射抜いて、その痛みにちりりと心が灼ける。
「恋心ではないと解っていても、妬けてしまいます…」
「ランジエ…」
「私の悪い所を炙り出すつもりですか?悪い人だ。」
ーー要するに、躾がなってないのか?
言いたかった言葉は、ランジエの唇で塞がれて音にならなかった。

***

暗闇の向こう側から無数の手が伸びてきて絡んで動けなくて。息ができなくて怖くて。
『ジョシュア…』
何も掴めないとどこかで解っていながらなんとか手を伸ばした所でシベリンの目が覚める。寝巻きが嫌な汗でひたりと肌に貼り付く感触に起き上がり、背後にジョシュアが眠っているのを確認して無意識にほっとする。
冷たいシャワーを浴びて上半身だけ裸のまま歯を磨きながら暦の機能付きのデジタル表示を見て週が明けている事に気づき呆然とする。連休の1日目の夜あたりからの記憶がぼやけて曖昧だ。
ーー俺何してたんだ?寝てたのか?
ジョシュアと過ごしていて、全く眠くなかったはずなのにいつの間にか寝てしまっていたりこうしてすっぽりと何をしていたのか覚えていないことがたまにあって。何でもやりかねないジョシュアの食えない笑顔が頭を過ぎるが、たまに自分が心の暗がりに溺れて、そういう時に驚く程に時間が経っていたりしたことが良くあったので多分それなのだろうと思うことにする。単純に寝ていただけかも知れないし、どちらにせよ覚えていないという結果は同じなのだから。
「……」
まだ早朝で仄暗い中、いつもならさっさとジョシュアの部屋を出て自室に一度戻る時間だが先程の夢のせいで戻る気になれず、音を立てないよう部屋をうろうろした後ちらりとベッドを見て恋人(もういい加減、恋人と認めざるを得なくなった)の眠る傍に潜り込む。
身体を丸めてジョシュアの胸元に頭を擦り寄せて。悔しいが酷く落ち着く体勢にうとうとと微睡む。
ーーったく、昨日も寝てたとしたらどんだけ寝れるんだ俺…
小さい寝息を立てはじめたシベリンの頭上で、寝ていたはずのジョシュアの口元が堪えきれないように笑って歪んだ。

***

「ま、待って…」
制止の声にドアを開けて出ようとしていたジョシュアが振り返る。
「何?」
いつも一緒に食堂に行くのを嫌がるシベリンに呼び止められたのが意外でぴたりと止まったが一瞬目を合わせた後ふっと笑って目にかかっていた髪をかきあげる。
「一緒に行きたくなっちゃったの?」
珍しくストレートに意図を汲んでくれたジョシュアに腕を引かれたシベリンは微妙な表情で頷きながらなにか口籠っていたが特に気にせず出ることにした。のだが。


「ジョシュア」
夕日に照らされた渡り廊下でジョシュアは今日もう何度目かのシベリンからの呼び止めに振り返る。
食後自分だけ先に席を立って適当な場所で休憩するのはよくあることで、特に何も考えず席を立って歩いてきたところだった。
きょとんとしたデモニックの表情だが、底の見えない井戸のように黒い瞳は全て見透かしているように煌めく。シベリンは視線を泳がせて逸したまま近寄って横に並んできた。
「朝からオレにべったりだけど、夢でも見た?」
頬を撫でて自分の方を向かせると「べったり」という表現にばつが悪そうに頷いて。
「…ん…それに…ボリスの態度がなんか変でさ」
「あぁ…居辛いの」
特に確認していなかったが一昨日の夜のことをシベリンはどうやら覚えていないようで。あんなシベリンを見た後でどう接したら良いのか困窮して俯くボリスの顔が容易に想像できてジョシュアはくすりと笑う。
「『あぁ』って、何か知ってるのかよ」
「聞きたい?」
「う…いやいい…」
ジョシュアの楽しそうな顔にどうせろくな事ではないのだろうと、知らぬままを選ぶ。知らぬが仏。ジョシュア絡みの事については知らないほうが良いことばかりだという謎の確信があるのだ。
「そこに座ろう」
人通りのない奥まった場所にあるベンチ。言われるまま黙って横に座ってくるシベリンをジョシュアは横から近すぎるほど近づいて凝視してくる。
「な…なんだよ…」
いつもならいくら人目がなくても外でこんなに距離を詰めるとすぐ押し返してくるのに。金色の虹彩の模様がはっきりと目視できるほど近いのに特に何も言ってこないシベリンにジョシュアはくすりと笑う。
「抵抗しないの?キスしちゃうよ」
言い終わった時にはもう、唇が触れていた。
「…んっ」
唇が触れたまま頭頂部から襟足にかけて髪に指を絡めるように梳かれ肌に触れるか触れないかのタッチに無反応では居られず身を捩る。そのままやんわりと髪ごと後頭部を掴まれて目を開けるとすぐちかくにジョシュアの黒い瞳があった。
「前から…貴方が絆されて靡いた途端興味がなくなるかもしれないと自分で心配だったんだけど、そんな事なかったな」
「え…?んん…」
独り言だったのか返事をする間もなく噛み付くように奪い尽くすようにキスをされ、頭の中が痺れて薄っすらと開いた視界に映る全てが色を失ってしまうように感じてぎゅっとジョシュアのシャツを掴む。
「ああ、絆されたわけじゃなくてお仕置きが怖くて逆らえないだけとか?」
どっちでもいいけどね。と笑うデモニックをキスの余韻で呆けた顔のシベリンが見つめる。あからさまな視線の終着点をジョシュアは指で自分で指す。
「もっとキスしたい?」
「…どうせしないくせに聞くなよな…」
「しないけど強請ってみて」
無茶苦茶なジョシュアの言い分に頬を赤らめた後呆れたようにシベリンは眉根を抑えて溜息を付いて、自分の髪をいじっていたジョシュアの手を取るとそっと手の甲に口付けてきた。思わぬ恋人の行動に何も言わずに眺めていると指や手首にも口付けて。手首の骨張った所を確かめるように唇をすべらせて、そのまま視線だけ上げてふてくされた顔でぼそりと言った。
「…くちがいい…」
強請っていると言うよりも煽っているその無意識そうな表情にジョシュアの欲が一気に炙られる。
「……キスじゃないことしたくなった。」
「え?」
「部屋に戻ろう」
デモニックの笑い方と、急に腕を引かれベンチから立たされた事に焦ったシベリンは少し後ろに下がろうとする。
「え、待てよ、今日はしないからな?」
「シベリン」
やんわり断ってくるシベリンの手首を掴んでする、と薄くついた傷を強めになぞってやると息を呑む音が聞こえて、顔を上げて目線を合わせると怒っているようで焦ってもいるようで、羞恥に塗れた何とも言い難い表情でジョシュアを見ていた。
「いいことしようね」
まるで手首の傷がスイッチだったかのように力の抜けたシベリンの腕を引いて歩き出すとふらりと付いて来る。
どっちみち好きにされるのだから諦めてはじめから大人しく付いてきたらいいのに。ジョシュアは喉奥で小さく笑う。
ーーまぁ、悪足掻きにも近い『俺は嫌だった』的な小さな逃げ場の用意くらいさせてあげてもいいけど。


***


「ん、んあっ、あ、あぁ」
「しないって言ってた割にぐちゃぐちゃだね」
白い壁に押し付けられた頬と身体を支えようとついた腕がジョシュアの動きに合わせてずるずると上下して擦れる。ドアを閉めてすぐ立ったまま「いいこと」を始められて。隅々まで知り尽くされた身体は少し触っただけで容易く溶けてジョシュアの熱い昂りを飲み込んで。思惑通りに喘ぐシベリンに追い打ちをかけるように下から突き上げてやれば膝が震えて体勢が保てなくなる。
「ふ、ぁ…」
「ちゃんと立ってて」
目の前がちかちか瞬いて足腰に力が入らなくて、震える腕を藻掻かせてどうにか壁に肘から先と顔を密着させて。
「ん、んん、あ」
半端に膝までずり下がって脚の動きを妨げているズボンとベルトがジョシュアに突き上げられる度にカチャカチャと音を立ててシベリンを情けない気持ちにさせる。浅く息を吐いて可能な限り快感を逃そうと努力している様を背後から見て取ったジョシュアはシベリンの左脚に指を這わせたかと思うと急に挿入していたものを引き抜いた。
「あっ…!?」
「こっちだけ脱いでこっち向いて」
ほぼ限界まで追い詰められていた所で抜かれた衝撃に震える背中に声をかける。振り向いたシベリンの顔はぼうっとしていて涙を滲ませていて。一瞬考えたのか言われたことが脳に到達するまでに時間がかかっただけなのか。少しして目線を下にやるとのろのろと壁を背にしてジョシュアに触られている方の脚をズボンから抜き出した。
向き合って身体を密着させて脱げた片脚をジョシュアが持ち上げて「これからすることにちょうどいい位置」に調整すると、腰を引っ張られたシベリンの背中の位置がずれてほぼ同じ目線になる。壁に低めに手をついたジョシュアの腕に膝をかけたような酷く恥ずかしい体勢に視線を泳がせるが、何も言えずに目を伏せるとクスリと笑われる。
「その諦めた顔…すごく唆る」
「ぁあ…っ」
一気に突き入れると思わせておいて先だけ含ませて抜き差ししてみるとこれまでに味わったことのなかった種類の快感にシベリンの身体が大げさなまでに揺れる。
「もしかして」
熱り立った昂ぶりを少し突き入れてゆっくりと出しながら逸していた目を合わさせて。
「抜ける時もけっこうイイのかな?」
「っあ…!」
張り詰めたシベリンの昂りの根本をきつく掴んで、押入るときよりも抜く方に時間をかける動作を繰り返してやるとかたかたと震えながら首を振り出す。背後から入れていた時に既に限界まで来ていた身体に更に快感を流し込まれて。指先にも頭のなかにも巡った快感が暴発しそうに痺れてじんじんと存在を主張する。
「ぁっ…も、おかしくなっ…」
「おかしくなっていいよ」
「…っ、は…っ」
「あれ、また出さずにイっちゃったね」
仰け反った喉元、がくがくと崩れる身体にジョシュアは興奮しきった瞳で舌をぺろりと出す。シベリンのモノを掴んでいた手を離して腰を掴み、わざとらしく確認がてら強く揺すってやれば律動のたびに少しずつ白濁が滴るようにこぼれる。
「もうやめ…っ、あ、うぁ…」
「なんで?きもちいいでしょ」
行き過ぎた気持ちよさに力が抜けて壁伝いにずり落ちていきそうになるシベリンを繋がったままゆっくり絨毯に寝かせると覆いかぶさって涙の止まらない瞳に、泣き言か喘ぎかもう判別のつかない声を出す唇に口付けながら更に腰を打ち付けて。
「はやくおかしくなって」
――そして、オレのことしか考えられなくなって。

***

「おはようございます」
「あれ、ボリスだけ?」
翌朝遅めに食堂に現れたボリスは一人で、珍しい事にジョシュアが口を開く。
「ボリスおはよう」
ジョシュアに盛られた野菜を口に含んでいた為ワンテンポ遅れた挨拶をシベリンが口にするとボリスは椅子には座らずシベリンの正面に立ってきた。
「…ボリス?」
一見無表情、いつものようにフラットに見えるがきゅっと結んだ口元に違和感を感じてシベリンは首を傾げる。ジョシュアはその背後からじっとボリスを伺っていたが、すぐにどうでも良さそうな顔で紅茶を飲みはじめる。
「シベリンさん」
「ん?」
「ジョシュアを好きですか?」

 

懲りてないな、とフォークを持つ手をピタリ止めて固まったシベリンの後ろでジョシュアが口元だけで笑む。
「っと…」
まさかの相手からのまさかの質問に一瞬不自然に固まった自分を心の中で叱咤しながらシベリンはいつもの曖昧な笑みを浮かべる。
――これが昨日感じていたボリスの態度の違和感の理由か?何があったか聞いておけばよかったのか?
後ろをちらりと向くと愉しそうなジョシュアが背中を指でなぞってくる。変に誤魔化したら後でどうなるかな?とでも言いたげな顔だ。
――もう俺とジョシュアが「そういう関係」なのはばれてしまってるわけで。
変に誤魔化したら余計に色々抉れる予想くらい、目の前のボリスの真剣な顔を見ればシベリンだってできるわけで。
「ジョシュアを?好きだよ、あー、どうしてそんな事…」
努めてあっさり言い放つと同時に疑問も付け加える。それ以上突っ込んでくるのなら理由を述べてほしいという牽制の意味も込めて。
ボリスは一瞬目を見開いたがすぐにいつものクールな表情を見せてぺこりと頭を下げた。
「わかりました」
朝食はもう取ったので、と教室に向かうボリスをシベリンは呆然と見送る。
――なんだ?なにがわかったんだ?

「背中をつつくのはもうやめろよ…」
「感じた?」
「…っ、ばかやろ…」

ボリスの態度は気になったがそれも一瞬で、目の前の小悪魔(人前では)の対処に思考が移ってシベリンはすぐに忘れてしまう。ジョシュアが意図的にそうしたことには気づかずに。

「野菜もっと食べなよ」
「ああもう、うるさいな!」

 

 

 

 

END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2017/05/31 全15707文字

 書きながら聴いていたBGM

【童貞が】独りんぼエンヴィー【歌ってみた】 - YouTube

【MV】 ID/luz×nqrse×ぷす - YouTube

방탄소년단(BTS) - 'I NEED U' MV - YouTube

SHINee - 「Sherlock」(Japanese ver.)Music Video Full - YouTube

 

 

突然始まって突然終わる。

游ゴシックLiteでコピペしていたら行と行の間がクソみたいに開いて戻せず、一括での直し方を知らないので上から下まで一行ずつ手動でBackSpaceした面倒くさい思い出を作ってくれた作品になりました^^(苛々)