さびのらいhuのーと

未定暫定腐ってる感じの何かご用心

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こちらはSavi(さび)によるMMORPGTW(テイルズウィーバー)腐二次創作を中心としたブログです。
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お題短文「4.関係ないだろ」(ジョシュシベ)

確かに恋だった

 ↑こちらのお題サイトさんからお題を借りました。

ツンデレな彼のセリフ

4.関係ないだろ

です。
 
ジョシュシベ短文。

 

 4.関係ないだろ

 

 

 

 

 

 

 


長めの夏季休暇で人も疎らな食堂のテラスで、シベリンは横にジョシュア、正面にランジエ、斜め向かいにルシアンと言うなかなか微妙な布陣に何でもなさそうな顔をしてはいるが暑さとはまた違う汗が出ているような自覚があって。


先日1件あって本当なら目も合わせたくないランジエがまず目の前に居るわけで、ボリスが居ない事が救いでもあり恐ろしくもある。当の本人は悠長な笑みを浮かべいつもと寸分違わず行儀よくお茶を飲んでいて、その様子が殊更シベリンの気持ちを波立たせる。思い出したくもないあんな事があったのに(思い出したくないのはシベリンだけなのかもしれないが)揺れているのが自分だけだなんて。ジョシュアといいランジエといい、どうして周りに居る歳下は揃いも揃ってこうなんだろう。と心の内で頭を抱える。自分の矜恃に形があって人に見せられるものであるとしたら、相当悲惨な事になっているだろう。

(早く食べてさっさと部屋に戻ろ…)

殆どまともに耳に入ってこない会話に適当に相槌を打ちながら細く切られた大根のサラダをポリポリと齧っているとルシアンと目が合う。

最近になって気づいた事だが、ルシアンは良く自分の事を観察宜しく眺めているのだ。本人と同じく明るく無邪気で浅瀬のようなブルーの瞳はいつもきらりと光って、まるで全部知ってはいるけど敢えて黙っているような佇まいのそれがシベリンはなんとなく苦手で。

いつも今にもなにか言い出しそうで笑みを作るだけのタブーを知らない口元が、面子の微妙な今日こそ何か突拍子もない事を言うのではないかと気が気でない。


横をちらりと見ればつくりもののようにきれいな顔をしたジョシュアがにこりとして自分の皿からナゲットを取っていくところで。

見た目で栄養の計算でもしてるのか足し算引き算のように勝手に肉を取られ野菜を置かれもう何度も目にするその光景に文句を言う気もしない。

「シベリンこれ」

ナゲットのかわりにずいっと目の前に差し出されたオクラを二人の時によくそうされるからか条件反射で口にする。ジョシュアから一般的に言うところの「あーん」を人前で受けてしまった事にシベリンは気づかないのかジョシュアの方を向いたままもぐもぐと咀嚼している。

「おいしい?」

シベリンは風に遊ばれてふわりと揺れるジョシュアの灰色の髪を目で追いながらんー、と生返事をして。元の向きに直ると同時にランジエとルシアンの視線に気づいて怪訝な顔をする。

「…?……なんだ?」

少しの間に視線の原因を考えたであろう上でのそれに、慣れた事ゆえの無意識だったのかと2人がなんとなく頷く。

ジョシュアはジョシュアで、まさか素直に差し出したオクラを食べるとは思ってもいなかった事もあって、繰り返すのはやはり効果があるんだなと思わず笑ってしまいたいが堪えて首を傾げる程度の動きで感情を逃がすことにする。


「…あ、僕もう行くね。」

その場に流れる微妙な空気に今にもなにか言い出しそうに口元を緩ませていたルシアンだが、時計を見て慌てて席を離れて。じゃあ片付けてくるね。とジョシュアも席を立って。


「………」
沈黙と共にランジエと二人席に残されて、思わず目が合うが二人になった途端にぎらつく朱い瞳を見てはいられず目を伏せる。
(こいつと俺を二人きりにするなんて、あいつほんとどうかしてる…)

ギリギリ部外者のルシアンがいなくなった事で正面でにこやかに笑んでいるランジエと完全に目を合わせられずに下を向くシベリンに追い打ちをかけるようにランジエが喋り始める。

「…虐められているだけじゃないんですね」

「……?」

いくら人が少ないとは言え、こんな明るい時間から出していいとは思えないような単語にシベリンが驚いて顔を上げる。

「甘やかな時もあるんですね。…あの時は随分雑に扱われていたようなので心配していたんです」

「おい、やめろよ…」

低めの声で窘めつつも、それがなんの効果も得られない事をシベリンは自覚している。ランジエに泣きわめく所を見られたあの日から、もうどこをどう取り繕っても無駄な事など分かっているがそれでも。
周囲に人が居ないのに落ち着きを失い焦りの色が浮かぶ金の瞳にランジエの目が細く笑む。

「ジョシュアは…二人きりの時は優しいんですか?」


「俺達二人の事だ…関係ないだろ…ランジエには」

色々見られてしまい弱みを握られたような関係ではあるが、だからと言ってなにひとつ明け渡してやる気などない。
存外ひんやりとした空気感でシベリンにそう言われて、ランジエはへぇ、と言った顔をする。前の手応えの記憶からもっと取り乱して感情を出してくれると思っていたが、この距離感ではそうもいかないようでランジエは内心落胆しつつふわりと笑った。

「なんだ、ちゃんとジョシュアを好きなんですね」
「オレがどうかした?」

かぶり気味に聞こえた自分の声に振り向いたシベリンの表情を見たジョシュアが、そのきれいな瞳の端に僅かな苛立ちを滲ませてランジエを睨めつける。
「虐めないでって言ったよね?」
わかってはいるんです。という風にふわりと笑うランジエにジョシュアは溜息をつく。生きていくうちに心が痛みすぎて麻痺したり、怖いものの少なくなった相手はやり辛い。
(恋人になにかした所でランジエには響かないし困ったものだな。)
「あまり詮索すると嫌われるよ」
他人事のようにそう言いながらシベリンの背中を押すと、じゃ、とランジエを置いて食堂を後にした。


「オレがなんだったの?」
拭うのが雑すぎてシャワーの滴をぼたぼた落としながら目の前まで来たシベリンの髪を拭いてやりながらジョシュアがそう聞くと、どうせ聞いてたんだろと言いたげにちらっと見られただけで返事はない。
長い髪の水分をあらかた取り終わって、冷やしておいたゼリーを持ってくる。

「シベリンこれ、ほら。」
スプーンに掬って目の前に出せば何のためらいもなくあ、と口が開く。
オクラの事を何か言ってやろうと一瞬思ったがゼリーの味が気に入ったのかうまいな、とシベリンが少し笑ったのでやめることにした。
「違う味もあるよ」
「何個買ってきてんだよ…」

小さめの冷蔵庫を覗き込んだシベリンが呆れたように笑いながら肩に触れてくる感触に、ジョシュアは満更でもなさそうに首を竦めた。

 

 

 

                                         ***

 

 

 

 

 

 

下書き消して焦ったけどコピペしておいたものがそこそこ残っててセーフ。