さびのらいhuのーと

未定暫定腐ってる感じの何かご用心

ここへ漂着された方へ。
こちらはSavi(さび)によるMMORPGTW(テイルズウィーバー)腐二次創作を中心としたブログです。
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さしずめ紅い、お星さま③

ジョシュシベ・腐(R18)

 

 

 

 

 

 

さしずめ紅い、お星さま③

――紅い死神は素直にならない―― 

 

 

 

食堂からの帰り、いつものように石畳の中庭から寮の門をくぐる。

雨水を存分に吸った花ばなが花壇からあふれるように咲いている。

革靴の上にひらりと舞い落ちた白い花びらに、シベリンは視線を落とす。

花なんて咲いてたかなーー。睡眠不足が酷くなってから、こういうことには目が回らなくなっていたのかもしれない。

 

無意識に襟元に触れながらジョシュアのことを思い出す。

とてもひんやりとした眼をしながら、きれいな唇が弧を描くところ。

どうやら昨夜から恋人らしいのだが。恋人は恋しいからこそ恋人なんだぞ。好きかどうかわからないってなんだ。恋しくないだろ。

好きかどうかわからないならそのうち飽きるだろう。そうしたらまた、もとどおりになるだけだ。

これじゃ俺は好きかどうかわからないと言われたところにずいぶんと引っ掛かってるみたいだ。引っ掛かっていたとしても、ジョシュアへ好意があるかと言われればNOだ。ーーいまは。

 

 

ただこのままーー好きかどうかわからないと言われても、キスをされたら。そっと指を絡められたら。やさしく名前を呼ばれたらもう、勘違いしてしまう。

苦しい夜に誰かに縋りついて、わかってもらって、眠るまでみていてもらうーーそんなあるべきところにはあたりまえにあるものに飢えている俺の「なかみ」があの花壇の花のように収まりきらずあふれてしまう。

そうしたらもう、もとにはもどれなくなる。

ほしくてほしくてたまらないのに、もとどおりになるために多く望まず期待をせず通わせずーー。

 

 

まだ、まだもとどおりになれるところにいる。

 

 

 

寮の廊下をうつむいたまま誰とも会わず自分の部屋にたどり着き、ドアを開けていつものように後ろ手で施錠する。

金色の双眼が映しているのは靴にはりついた白くてまるい花びら。

「はは…」

シベリンは薄く笑った。

 

 

 

 

「なにか楽しいことでもあった?」

 

 

 

ドアは背後にある。床を見たそのままで可能な範囲を確認する。この床もごみ箱もソファーもベッドのカバーも、自分の部屋のものだ。

ーージョシュアならば、湧いて出てもおかしくはないか。(勿論物理的に入ってきたのだろうが。)

思わず息をするのを忘れていたようで、留まった息をシベリンは細く吐きだす。

 

楽しくて笑ったわけではないのを重々承知でそう聞いてきた声の主は床をほとんど軋ませる事無く歩み寄り、正面に立った。

顔を上げないシベリンの視界に指の長い綺麗な手が入り込み、続いて灰色の頭髪が揺れて、ゆっくりと靴にはりついた白い花びらをつまみあげる。

 

「儚くて…かわいいね」

 

指と指の間に隙間をつくると、どこにもくっつけなくなった白い花びらは床の上にはらりと落ちた。

「脆くて」

自分に言われたような気がして思わず目を合わせて軽く睨むと、ジョシュアはふっと笑った。

「恋人になんて顔するの」

首筋の傷に成り代わり昨夜から時折心を乱すそのワードにシベリンが困ったような顔になる。相変わらず急に間を詰めてきたジョシュアは、シベリンの胸をそのままおさえてドアに押し付ける。

「オレにはそんな顔で、ルシアンにはあんな笑顔見せるんだ…」

 

傷ついたような口調にそぐわないなんでもないような顔をして。

シベリンはいつのことかどれのことか、なんでそんなことを言われているのか図りかねていつものように視線をそらす。

ーー笑顔はまぁいいや、他の顔、見せてもらうから。

視線をそらしたシベリンの頬にキスをすると驚きからかぴくりとはねて、はねてしまった自分を叱咤するようにシベリンの目が細められてジョシュアの気分を良くする。

あちこちに啄むように口付けながら、優しく縋るように重みをかければドアに寄りかかっているシベリンの体勢が下がって目線が同じ高さになって。そっと指を絡めるとシベリンの表情が変わってくる。気持ち良い気持ち悪いとはまったく別物のそれに。

やわらかくやさしくするとシベリンは困ったような苦しそうな顔を見せる。ジョシュアの知っている一般常識的には、やさしくされると嬉しいもののはずで。

ーーまるで自分自身に警戒しているような顔をして。

絆されて、好きになって、欲しくなってしまったその先が怖いのか。

でもそれって、もうほんのすこしはすきってことだよね。

シベリンには気付かれないように、床に落ちた白い花びらをジョシュアは靴底で踏みにじった。

 

 

 

 

「シベリンは絶対オレのこと、欲しくなるよ」

唇と唇が触れあったまま、シベリンは嫌がるように首を振った。

 

 

 

 

 

 

 

 

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風ひとつない、月がはっきりみえる夜。

 

 

 

 

存分にあかるい月のひかりに照らされたシベリンの寝顔をジョシュアは視ている。

毎日おいで、と言ったのに数日に一度しか部屋に来ないその恋人はうまく眠れぬ夜が続いてもう限界、というラインまで我慢しているのかドアの中に招き入れて寝てしまうまでに最近は時間がかからないことが多い。

 

ジョシュアが増長させるまでもなく、暗い部分がシベリンを覆ってしまおうとしていることにすぐ気づいてかけたまじないはすでに取ってある。

 

――それでもこれか。

つるつるした肌触りの夜着をそっとはだけると、勝手に着せ替えたシベリン曰くゆるいねまきーーシベリンは不満そうだが、安眠するには身体を締め付けない服装が良いとジョシュアは考えているので毎回勝手に着せる。ーーが呼吸の上下とともに細微にしわの形を変えていた。

 

起こすつもりもないが起こさないように気を使っている素振りもなく、ジョシュアは何度か寝巻きの上から胸元や腹筋を指で軽くなぞったあと、その先にあった寝巻きの下に手を滑らせ這わせるがシベリンは ん、と鼻から抜けるようひと声出しただけで起きることはない。

寝ていても起きていてもジョシュアは突然シベリンに触れることが圧倒的に多い。はじめは毎回ふれる度に驚いたり思わず身体が跳ねたりしていたが、それもずっと続けば嫌でもふれることに馴染んでくる。

もちろん、慣らすためにやっていたわけだが。

シベリンは最初から首筋以外の部分への接触にあまりいい反応を示さなかった。キスも苦しさ8割、といったところだろう。

身体が緊張や恐怖から強張っていたり、気持ちがゆるんでいない状態でいくら撫でてもその手やキスは『ふれた』という感触しかのこせないままで。

たまに首筋に軽く噛みついたりもするが、なんでもない接触の方が多いのだと時間をかけて馴染ませて。

こわい、なにをされるんだろう、ふれた、より、

ふれた、きもちいい、のほうが色々とやりやすい。

 

ーーま、あんなはじまりかたをしたんだ。

惚れたりなんだりを通過してきた男女や望んだふれあいとは事情がちがう。いきなりどこもかしこもきもちいいばかりだとその方がむしろ心配だ。

 

もうとっくに梅雨はあけて、涼しい夜もここ数日までだろう。

相変わらずもう治ったはずの襟元は日中ずっと禁欲的にきっちりと閉じられ、ドアを開けたときの渋々とした表情が寸分も違ったことはない。

恋人の件は考える暇を与えず追い詰めて手に入れた『シベリンを好きにできるポジション』に過ぎず、相応に甘くなったり笑顔を向けて欲しいとは思ってはいなかったので気にはならない。

ジョシュアと居るときのシベリンの顔にはいつもだいたい、『なんで』と書いてある。

なんで俺なの。なんでふれるの。なんでまた来てしまったんだろう。なんで、なんでーー。

心の暗い部分の混乱がひどいときは自分が今ここで足元の床に足の裏をつけて立って息をしているところにすら、『なんで』だろう、という顔をしていることがある。

 

でもけっして『なぜ』と答えを欲しげに聞いてくることはせず。

まるでそこで答えを出さずに漂ってるのが心地いいかのように。

危うくて、もしかして目の前で壊れてしまうのではないかと思うほどのシベリンの脆さが自分にしか見えていないのかと思うと痺れるような愉悦が頭の先から足のつま先まで駆け巡る。

 

ーー興奮してる。

 

自分の身体の昂りに気づいてジョシュアは苦笑した。

 

――まだどろどろにはできないだろうな

 

 

 

それでも。

 

 

 

まだ夢の淵にいるシベリンの背後に寝転ぶとジョシュアはまず顔から彼をさわり始める。頬、くちびる。一カ所一カ所確かめるように押し当てては離して。

 

「ん…っ」

 

顎から首のラインに指が差し掛かったとき、シベリンが声をあげた。流石に起きたのだろう。起きていても寝ていてもどちらでもよかったジョシュアは特に声もかけず行為を続ける。

頬を撫でつけながら今や寝ているときしかこうして晒されない首筋にふれるかふれないか分からない程度に舌を這わせる。

 

「ジョ…シュア…なに…」

 

眠そうに掠れた声を無視してべろりと舐めてみるとシベリンは思わず背を仰け反らす。

腕のうらがわの柔らかいところや、腰のラインをそろそろと撫でると震えていて。

思わず反応してしまうところ。をジョシュアは熟知しているのか、その的確な指先にシベリンは息が詰まる。疲れて眠りに落ちていた怠い体はいつもよりずっと正直に、シベリンの思惑を無視して快感を拾っていく。これまでに感じたことのなかったような体の奥の燻りに不安になって身をよじる。

 

「く…すぐったい…やめてくれ」

 

そう言われてジョシュアは寄り添うように背中にくっついていたが、自分だけ起き上がって横向きに寝ているシベリンの上に跨って圧し掛かってきた、ベッドに片肘をつき、シベリンの首元にジョシュアの手首がのるような少し息苦しい体勢。

 

喉を押される感触に楽になりたくて正面を向けば、すぐそこに漆器のような黒い瞳があって。

ジョシュアに顔を覗きこまれて慌てる前にゆるく反応している前をじかに触れられ頭のなかで火花が散ったように錯覚してしまう。

 

「きもちいいね」

 

自分が触っていてきもちがいい、というようにも聞こえるような呟き方だったが、それがシベリンに自分がきもちよくなっているのだ、という事実を突きつける。

 

視線を逸らさせてもらえないまま寝巻の中でゆるく立ち上がったそこを指の腹でなんどもなんどもなぞられ肌が泡立つ。「きもちいい」んだ、と思った途端に指が触れたその刺激がじんじんと指の軌跡につづいて追いかけていくようで、余韻が順にぱちぱちとはじけて堪らない。

 

あぁ、そこにあるね、といった感じで軽く握られたことは何度もあったが、こんなねっとりとした触り方をされたことはなかった。思わずいつからかシーツを握りしめていた両手で、自分を乱すジョシュアのその手を取り払おうとする。

 

「やめてあげられない」

 

宥めるような声音だが手は止まらない。肌蹴た寝巻から覗いていた胸の尖りを歯で触れられて。下と上とどちらを止めればいいのかうろうろと両手がさまよったが結局、どちらにも辿り着けずに寝巻を握りしめる。

 

「…っ……は」

 

自分の一挙一動を逃さないように見下ろして来るジョシュアの視線に耐えられず目をつぶると、それまでは聞こえなかったジョシュアの少し荒い息づかいや、想像もしたくないーー自分の体液からなる水気のある音に気づいて、ふくれあがる羞恥に耐えられず唇を強く噛むと、首の上に置かれていたジョシュアの手がもぞもぞと移動しはじめ、噛んだ唇の上で軽くノックするようにとんとん、と動く。

 

勿論それで唇を開けるわけがないと分かっているので片手の中に納まって、もうだらだらと蜜を零しているそれを強めに擦って驚かせ、強引に隙間を作る。

 

僅かな隙間から覗くシベリンの白い歯の数本に、爪を引っ掻けるように噛ませるともう歯を食いしばって耐えることができず唇を閉じることもできない。

 

あぁ、とかうう、とか。自分ですら聞いたことのない、まるで実は背中にでももう一つ口があって、そこから知らない人の声が出ているのを聞いているのだと思いこんでしまいたいほどに甘い声が口のすきまから出てしまって。ジョシュアの指先が触れる部分がゆっくり融けてなくなってしまいそうで。

 

心地よさを通り過ぎ度を越した快感に体温があがり涙腺からは勝手に涙が漏れてくる。

 

「や……あぁ…」

 

寝巻きを握り締める指に血が通いきれず白くなって、喉元を仰け反らせ、きもちよさとはずかしさでどこもかしこもあつくて指先以外があかくなっている身体にジョシュアの喉が鳴る。シベリンの寝巻きをずらして素肌を曝け出すと自分も腰を浮かせてシベリンのそれよりももっと熱を持った自分の昂りを取り出して、自分の手に一緒に握りこんでしまうとゆっくり馴染ませるように扱きはじめた。

 

「ぁ…え?…うあっ!」

 

焼ききれそうなところにさらに刺激が増えて堪らず大きく声をあげてしまったシベリンの口内へ更に進入してきて舌や頬の内側を一通り嬲った手がすっと引っ込んだかと思うと、次は首の後ろに回りゆるく結んでいた赤毛の根元を掴まれ、頭を軽く引っ張り起こされた痛みに目を開ける。ジョシュアは獰猛な眼をして、いつもはきれいに弧を描いているその口元からぺろり、とあかい舌を出してささやく。

 

「よくみえる」

 

シベリンはジョシュアの欲をあらわにした顔と、ジョシュアのあつい昂りと一緒に握りこまれた自身を数度見比べて、目を開けたことをひどく後悔した。もうぜんぶぜんぶ、あつい。ひとつ触れられればひとつ声が出てしまって、まるで楽器だ。手で邪魔をされていなくても声が抑えられない。リズムの早くなってくる刺激に顔を背けたくても髪ごと後頭部を掴まれて。

 

「すごく…イイ顔してる」

 

自分がどんな顔をしているのか、考えたくもないと思うと同時にその答えを知らされて、これ以上ないと思うほどに膨らんでいた羞恥が更につのる。

 

もうぐちゃぐちゃに握られている自分の芯が焼き切れて、熱が今にもあふれてしまいそうなのはジョシュアも同じなのか、息を吐きだしながら笑って、眉を顰めて、じっとシベリンを見る黒い瞳の横をすうっと汗が流れた。

 

「ねぇ…」

 

 それまで何も聞かず何も求めてこなかったジョシュアが快感に溺れても整った顔のまま舌なめずりをして、とんでもない事を口走る。

 

「イく顔、見せて」

 

あつくてたまらない芯の先端を擦られて。

 

声も出ないーー。

 

シベリンはジョシュアと目を合わせた状態で何一つ抗えないまま熱を放ってしまう。ぴったりくっついたままのジョシュアの昂りもどくりと脈を打っている。寝巻を握りしめたままだった指先も、足のつま先も、胸のなかも、頭のなかもぜんぶ血液がぱちぱちとはじけてしまいそうにあつく、身体がびくびくと戦慄くのを自制できない。

 

「今夜はこれで許してあげる」

 

仰向けの腹の上、まだ震えている腹筋の溝やヘソの窪みに滴った二人ぶんの白い液体をジョシュアが指でゆっくり混ぜ合わせるように触れてくる。

たったいま、自分が何をされていたのか知らしめるように指を浮かせても粘り糸を引くそれを見せられて。

みられてしまう。このままでは。ねだってしまう。

 

「…っも、さわるな…!」

 

堪らず身を捩ってよろけながら起き上がり拒絶を口にすると、ジョシュアはふっと笑った。

 

「許してあげようと思ったのに。そういうこと言うと…酷いことしたくなるな」

 

優しく笑んだ口元から出てるとは思えない言葉の内容にシベリンが静止して押し黙る。

 

ふらつきながら膝立ちになっているシベリンの背後に回って片足を割り込ませた上に座らせて、濡れて乱れた寝巻きからまだ出たままだった縮んだ中心を握り込むとびくりと跳ねる。達して時間が経っていないそこは酷く敏感になっていて自分達が吐き出した液体を絡めて伸ばすように数度扱けばあっという間に膨れ上がり透明な滴りを溢す。

 

「く…っ、ん………んんっ、」

 

力ない片手首を掴みあげて、そのまま自分の手首をシベリンの口に噛ませると籠った喘ぎが振動になって咥内から耳に抜け大きく響いて心を散り散りに乱す。

 

「自分の声、わかる?」

 

口元を押さえつけたまま首筋に浮かぶ汗を舐めとり、緩急をつけて昂りを嬲っていくとシベリンの身体ががくがくと震えて崩れてしまう。

 

「っは…んんん、ぅ」

 

再び達しそうになる寸前でジョシュアがぴたりと動きを止めて首筋から耳に舌をあてて滑らせながら低く囁いた。

 

「このまま…何度も何度もイかせてあげよう」

 

「ん、んん…!!」

 

耳のなかに舌を差し込まれ、自分の声がより脳内に響いて。ジョシュアはじっとしたまま手を動かさず軽く握っていただけだったのに、自分の声に、ジョシュアの声に、羞恥が弾けて達してしまう。

 

「オレのこと欲しいくせに、嘘ついちゃだめだよ」

 

 

ぱっと唐突に身体を開放されたシベリンがよろけてベッドに倒れ込むとジョシュアが容赦なく再び身体に手を伸ばしてくる。

身体を弄る長い指の動きは荒いのに、時折触れてくる唇はそっと甘やかに肌に馴染んで。

いっそ全部酷くしてくれれば、そのせいにして、傷を舐めるふりをして溺れていくこともできるのに。

戦慄く身体を止められず、溢れる涙も止められず。ぐしゃぐしゃに嬲られた身体は意識を手放した。

 

 

 

 

 

「今日変な声してんな」

おはよう、の挨拶を返さず栗色のストレートを雑に耳に掛けながらマキシミンがどうでもよさげに聞いてくる。

「戦いの最中に高揚して叫びでもしました?」

隣に立っていた朱い眼をしたランジエが、おはようございます。と付け加えくすくすと笑う。

「は。そんなことしてないさ、ちょっと昨夜は冷えたからな」

すれ違いながら肩を竦めて寒かったという素振りをして席に着くと、ねーねーシベリン~といつものようにルシアンが懐いてくる。

「昨夜課題を見てほしくてシベリンとこ、行ったのに~居なかったよ?」

ぶうぶうと文句を垂れるルシアンの後ろで、マキシミンもランジエもこちらを向いている。

 

「オレの所に居たよ」

シベリンが何か言う前に後方からジョシュアの声がした。

「なんで??ずるい、なにしてたの?おれもジョシュアの部屋入ってみたいな~」

「オレの部屋にはジュースも菓子もないよ」

「ええ~~~・・・」

「お前ら仲よかったのか」

「マック君気になる?」

「んや、どうでもいいわ」

マキシミンは心底どうでも良さそうに首を傾げると欠伸を一つして机に臥せってしまった。

「どうでもよくない!」

ガタリと立ち上がったルシアンの肩をランジエが押して座らせて。

「ルシアンはもう少し自分の部屋で落ち着いていられないんですか?」

ボリスの部屋に行きすぎですよ。ランジエがルシアンを窘めて話の矛先がずれていく。

「ええ~寂しいよ!おれは誰かと居たいもん」

 

人前で憚らずそんなことを口にするルシアンを見て、シベリンが目を細めた。

羨ましいな。

「ねー、夕食の後あそぼうよ~」

「はは、課題はどうなったんだよ」

「シベリンの部屋、行ってもいい?」

キラキラと期待に目を輝かせるルシアンに、シベリンは掠れた声で答えた。

「ま、遊ぶのはいいがそれならケルティカに行かないか?」

「わかった!レモンジャムパイ食べたいな♪」

 

無邪気に喜ぶルシアンの笑顔に、シベリンは唇を閉じたまま微笑んだ。

白い歯を見せるような笑顔が、ジョシュアの機嫌を損ねると知ってしまったから。

自分が踏み込んだ領域に誰かを招き入れることも、ジョシュアが嫌がると思ったから。

これがどんな気持ちに当て嵌まるのか、わかっている。でもシベリンは認めたくなくて軽く頭を振った。

 

 

 

振り返って見ることができなかったジョシュアは、どんな顔をしていたのか。

 

 

――紅い死神は素直にならない――