さびのらいhuのーと

未定暫定腐ってる感じの何かご用心

ここへ漂着された方へ。
こちらはSavi(さび)によるMMORPGTW(テイルズウィーバー)腐二次創作を中心としたブログです。
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すきをしらない、あなたへ。(短め完結)

ジョシュシベ・腐(R18)

 

 

すきをしらない、あなたへ。

 

 

日中散々上から照りつけていた太陽は沈みかけている。

暑さの名残りがまだあるからか人も疎らな食堂のテラスに珍しく1人で座るシベリンはテーブルに腕と顔を投げ出し、もう暫くすると月と交代するというのにまだ熱い太陽の光を惜しむように浴びていた。
カチリと音がしてその方を向くと、暑いのか胸元をはだけさせ栗色の肩まである髪を乱雑に一つにまとめたマキシミンが横に座ると同時に煙草に火をつけた音だった。
「なんだ、今日はジョー君はいねーのか」
目も合わせずまるで一人ごとのようにそう言うと気だるそうに肺まで吸い込んだ煙を吐き出す。シベリンはそんな態度のマキシミンを特に気にしている様子はなく微動もしない。
何も隠す気のないジョシュアのせいで、2人が「そういう仲」だということは初夏を過ぎ暑さが厳しくなる前にいつもの面子には知れ渡った所だった。
どちらも何も喋らずに数分、風向き的に煙たかったのかシベリンが軽く咳き込む。
「ああ…お前を煙草臭くしたらジョー君にどやされるな」
歯でタバコを咥えニヤニヤとしながら揶揄するようにけしかけてみる。
「は?何言ってんだよ」
顔も向けずに適当にあしらわれるが予想通りなのでマキシミンも構わず続けて。
「ま、怒られんのはお前だけどな」
「は…?」
そんな事あるわけ無いだろ、とほんとうにそう思っているような顔でシベリンが顔を上げて自分を見てくるのでマキシミンは喉の奥で笑って。
「試してみるか?」
煙草がジリッと音を立てるほど深く吸い込むと、シベリンに向かって勢い良く煙を吹き付けた。
げほげほとまともに食らったシベリンが一頻り咳き込んでからマキシミンを見るともうそこには居なくなっていて、残されたのは周囲に煙る煙草の香りとシベリンだけで。
「な…なんなんだあいつ?」
良く分からない絡み方をされて腑に落ちないがすぐに気持ちを切り替えて、ぼんやりとした休息の時間を取り戻した。

***

「暑くないんですか?」
殆ど足音をたてずに側まで来たのはボリスだった。彼も勿論暑いのだろうが暑さを感じていないような涼やかな表情で、シベリンと目が合ってからゆっくり会釈して隣に座って来た。
「夏の陽射しも悪くない」
ーージリジリ焼かれて生きてる感じがする。そう言いながらボリスの方を向いたシベリンはうっすら額に汗をかいていて、片眼だけ陽が当たってウインクするように眩しげに目を細める。同じように陽に照らされてまるで煮詰めたマーマレードのような色に見える髪がぬるい風でかき混ぜられさらりと揺れた。

「今日は一緒じゃないんですね」
さっきマキシミンが言っていたこととほぼ同じニュアンスのことをボリスにも言われてシベリンは表情を変えたりはしなかったが動揺してぱちぱちとまばたきをする。
「んー、神出鬼没だからな」
いきなり俺の部屋の真ん中に立ってたりするしな。心底驚いたその時を思い出して少し笑いながらそう言うと、目の前のボリスは軽く首を傾げている。
「ジョシュアが今どこにいるか知らないんですか」
そう言われたシベリンが今度は小首を傾げる。
「どこにいるか知ってるもんなのか?」
「そうですね、少なくとも…」
言いながら長い黒髪の先をくるくると弄る。脳裏に浮かぶ優しく笑う朱い瞳の彼は「離れていてもお互い居所を把握しておきましょう」
そう言って嬉しそうにいそいそとボリスから聞いたスケジュールをとても大事な様子で手帳に書きとめていたり、言わなくても所在を知っていることもあって(これは少し怖いと思っている点だが)、ボリスはどこもそういうものかと思っているのだ。
「知っているものかと」
真っ直ぐに澄んだ目でこちらを見て来るボリスに、シベリンはどう答えたものかととりあえず曖昧に笑んで見せる。
「ん~、そもそもよくわかんない奴だしな」
ジョシュアとまるで仲が悪いかのような肩の竦め方にボリスは違和感を感じる。恋仲にあるような照れのようなものを一切感じない。
あんなに…誰であっても不必要にシベリンに近寄るとピリピリした気配を隠さないジョシュアの執着が本人に伝わってないなんて。態度をよく見ていれば端々に独占欲が伺い知れるし。何でだろう。
「シベリンさん」
もしかしてーー言おうとして何かに気づいたボリスは日頃は伏せ目がちだから分からないが、くるりと大きくて深い湖の底のような蒼く灰色をした瞳を回して思慮する。
「睫毛がついてます」
え?、とシベリンが顔を上げると す、とボリスが距離を詰めてきて、細い指先が目元を撫でた。
「取れました」
すぐに離れると控えめに微笑んで、ボリスは席を立つ。
「サンキュ」
「…よくわからないのなら、ちゃんと訊くべきですよ」
「ん?あ、そうだな…」
いまいちよく分かっていない面持ちのまま別れの挨拶代わりに手をあげるシベリンにボリスは軽く会釈するとテラスから校舎に向かう渡り廊下へ向かい、途中で歩みを止めた。


「今…何してた?」
整った美しい相貌に似つかわしくない刺々しい気配を隠さずに、ジョシュアが渡り廊下の柱を背に寄りかかったままボリスの背中に話し掛けて来た。
「そんなに心配なら、籠にでも入れておいたらどうかな」
二人の立つその空間にだけ夏とは思えないような冷たい空気が走る。
「ふ、考えなくもないけど…今は違う話をしてる。何をしていた?」
ボリスは振り向きもせずに首を振るとひと言。
「そんなに執着しているのに、きちんと与えてあげない貴方が悪い」
「…?なんのことかな」
「持てる者にはわからない?」
全く答えになっていないどころか、いきなりすんなりとは頭に入ってこない類のことを言うだけ言ってボリスは「鞄を忘れた」とさっさと校舎の中に歩いていってしまった。

ボリスはジョシュアがちょうど背後に居合わせたことに気付き、シベリンに「ついてもいない睫毛」を取るフリをしたのだ。
ボリスの後ろの角度からそれを見たジョシュアには、まるでボリスからシベリンにキスでもしたかのように見えてもおかしくはなかった。
すぐにテラスに戻ってみるが角のテーブルにシベリンの姿はもうなくなっていて。ボリスの台詞を反芻しながらジョシュアは寮へ足を向けた。


寮へ入ってすぐ、相変わらず1度は自室へ向かうシベリンの後ろ姿を見つけて足速に追いつくと背後から見かけよりもずっと細い手首を掴む。
気配なく近寄り声も掛けずに触れた為か振り向いた瞬間のシベリンの金の瞳は殺気立っていたが、相手がジョシュアだと分かるとすぐに警戒を解いた。
「えっ?あ、ジョシュア…」
何も言わずに自分の部屋がある3階へ向けて踵を返すとシベリンを引っ張ってどんどん歩を進める。シベリンは訳が分からないがジョシュアのこうした訳が分からないところは今に始まったことではない。
ーーな、なんだ?怒ってるのか?
前を歩くジョシュアの表情は窺い知れない。有無を言わさずシベリンを引く手の力は強く、黙って手を引かれたまにふらつきながらも歩いて。
ドアの中へ強引に引き込まれるとすぐに強く抱きすくめられて。
「ジョシュア?」
黙って腕の中に収まっているシベリンの髪から薄れたラベンダーの香りと汗の匂いと。
ーー煙草の香り。
抱きすくめる延長のように後頭部を掴んで唇を重ねて、軽く舐めるといつものようにシベリンが閉じていた口を開く。
「んっ…」
軽く舌を差し入れてみるが煙草の味はしない。そのまま好きなように腔内をなぞって舌を絡めながら目を開けると間近にシベリンの閉じられた目蓋が見える。
試すためにあっさりキスを終えようと身を引こうとするとまだ足りないという風にそろそろとジョシュアの背に腕をまわして纏わりついてくる。
シベリンの素直な反応がそのまま優しい波紋のようにじわりと円を書いてジョシュアの心に刺さっている棘をひとつひとつ剥がして、いらいらと荒れ狂っていた腹の底がだんだん静かに波打つようになる。
二度目の長いキスの後、今日のボリスと、それに会っては居ないが煙草の香りと言えば…ジョシュアは顔を思い浮かべながら疑問を口にする。
「オレに何か不足が?」
シベリンに向かって言ったわけではなかったが、目の前に居たシベリンはもちろん自分に向かって言われたのだと感じて意図を汲めず。
「な、なんだよ…お前もかよ」
ーー今日はなんかみんな…おかしくないか?
「ちょっと出てくるから、シャワーを浴びてここに居て」
赤毛をひとつまみして嗅いで見せると、シベリンはあっ、と声を出して。
「よくわかんねーけど…マキシミンに吹きかけられたんだよ…」
とブツブツ言いながらも服を脱ぎはじめたのを了承の合図と取って足早に部屋を出た。

***

「んだよ、なんの用だ?日も暮れてお仕置きセックスの時間じゃねーのか」
マキシミンの自室のドアをノックもせず開けた途端酒と煙草のにおいがしてジョシュアは眉根を寄せる。
紫煙でくもった室内は自分やシベリンと同じ間取りとは思えないほど狭く感じる、読みかけのゴシップ雑誌、部屋の隅に置かれた目を通したのかも怪しい授業のプリント束の山、ベッドらしき長方形のものの上には洗って清潔なのか洗っても居ないのか不明の洋服やタオルが積まれており、床にはいつのものかわからない空の酒瓶に溜め込んだゴミ。部屋の中央の大きめのソファーが定位置のようで、寝起きもそこでしているのかシンプルなカーペットの上に毛布が落ちていた。
それらを数秒眺めて住んでる、というのはこういうことだなとジョシュアは再認識する。恋人であるシベリンの部屋を思い浮かべると本当に何もなくて。
まるで誰も住んでいないのかと見紛う程家具も荷物も最低限のその部屋で、何か足りないと感じていたそれが「生活している」感じで。まるで居た形跡を初めから残さないようにしているような。
あまりの惨状に思わず思考が脱線していたことにすぐ気づいて修正する。
「マック君、何この…ゴミみたいな部屋。後、セックスは夜じゃなくてもできるよ」
「ちょ、靴で全部蹴り避けるのはやめろよ!そこはダメだ!」
足元のゴミ…もとい雑多な荷物を乱雑に足で避けて、マキシミンの悲鳴にも似た制止も聞かずベッドらしき物体の上の荷物も適当に蹴散らすとスカーフを敷いてそこに座る。
ジョー君ひでぇな…で何の用だよ」
ジョシュアが部屋に踏み入ってからの数分で一気に疲れたような顔になったマキシミンが部屋にこもった煙を出すためかおざなりに少しだけ窓の隙間を開ける。
「そっちこそお仕置きセックスってなんの話?」
まるでそうあらねばならぬと思っているような節さえある彼のわざとらしい下賎な物言いには慣れているので構わず復唱して確認するとマキシミンは短くなった煙草をもみ消して、にやりとしながらその口元から肺に残った紫煙をゆっくりと吐き出す。
「はっ、あいつに煙草のニオイでもつけとけばジョー君が怒るかと思って」
「…確かにイライラしたけど何でそんなこと」
確かに苛ついて部屋に入った時点では、シベリンの態度次第でそうなっていたかもしれないけどーー。旧知の仲だがこういうときのマキシミンの言い分は主旨がよくわからないことが多い。
「お前が怒るって言ったらあいつ、全然わかってない顔するから」
「マック君」
「お前さぁ、あいつに好きって言ったか?」
マキシミンは何も答えないジョシュアを見ると鼻で笑って。曇ったコップに注がれていた酒を一口飲んで、度数が高いのか渋い顔をして。
「色恋沙汰っーか、…あ~、愛された記憶のないやつ相手にいくら態度で出たって駄目なんだよ、知らないのに感じ取れるわけないだろ、口で言えよ、好きって、何回でも言ってやれよ…ったくよ、そんなんだからお前はバカなんだろ、こんなこと、俺に言わすんじゃねぇよ。」
そう一気にまくし立てると窓を締め、もう一口酒を煽り。
「頭が良いなら二度も言う必要ないな?さっさと帰って告白してセックスでもしろよ」
身も蓋もない言い様に逆に笑いがこみ上げて、マキシミンの話を真顔で聞いていたジョシュアは堪えきれず吹き出した。
「はは、わかったよマック君」
「だから俺の荷物を靴で避けるな!」
怒号の飛ぶ部屋のドアをパタンと閉めると廊下は蒸し暑くしんとしていた。
ーー持てる者、持たざる者…そういう意味でか。


***

 

数分しか滞在しなかったマキシミンの部屋で染み付いた煙草の香りを和らげるために少し外の風に当たって自室へ戻ると、ドアを開けてすぐの足元にバスタオルを敷いてシベリンが転がっていて危うく踏みそうになる。
ドア側に頭を向けて寝転んでいるシベリンは言われた通りシャワーを浴びたようで髪が濡れている。寝ているわけではなくじっとりと、どこか不満そうに金の双眼をジョシュアへ向けてきて。
「お前、外からしか開かない鍵かけてたのか?」
手を引いて起き上がらせてベッドへ座り直させるとぽつりと、そう言ってきた。
「今日まで気づいてなかったの?」
シベリンを部屋に招くようになって暫くして付けた外鍵のことを、シベリンには隠していたわけではなく、特に聞かれなかったので何も言わなかっただけで。
「外から鍵なんか掛けたら俺が出れないだろ」
「そうだね。出さないために掛けてるからね」
「え…」
シベリンだけが座った状態でジョシュアは立ったままで。顎を掴んで上向かせるとべっこう飴のような金色の瞳に不安の色が混ざって揺れる。
「ほんとうは、視覚を奪って自由を奪って…閉じ込めておきたい…」
「ジョ…」
何か言いかけたシベリンの口元を指先でそっと押して止めて。
「ほんとうは、誰にも触らせたくない…誰にも見せたくない…」
いつもどこか他人事のような顔で、目の前で何があっても演劇でも見るような風で。身体に纏う雰囲気はいつでも余裕があり。そんなジョシュアが自分にこうも拘って追いかけてきて自由を奪って、管理したがるのかいまいちその表のイメージとかけ離れている行動に理解が追いつかない。指先を押し当てられた唇は少し震えていて、そっと離すとシベリンは頭を振る。
「どうしてそんな優しい顔で…そんな物騒なこと言うんだよ」
「実行に移していないのにやったかのように怖がられると…実行して怖がられた方がましのように思えるが…仕方ない結果だ。オレは貴方が恐怖を感じないようなベースを作れていなかったのだから。」
「ジョ…っわ?!」
ジョシュアはシベリンの肩を勢いよく押してベッドに押し倒すとそのまま覆い被さってキスを仕掛ける。
「んむ…っ…っ」
驚いてなにか言おうとしていた唇を強引に塞いで、それでもぺろりと舐めてやればそういう風に教えこんだから、隙間をあけてジョシュアの舌を迎え入れる。
「んん…っあ」
深く食らいつくように口付けながら胸の尖りや脇腹にやわやわと触れると、ジョシュアの指先に馴染まされた身体はあっという間に火がつき堪らないというように身を捩り、感じるままに声を漏らす。
ジョシュアは身内からは兎も角、外見の良さと家柄も相俟ってか色恋の絡んだ愛情には望まずともうんざりする程に事欠かなかった。望まぬ相手からも望んだ相手からも愛されている自信があった。
自分が無体を強いてもシベリンが揺るがず向かい合ってくれるのは、そういう風に仕向け馴致したから、という理由の他にシベリンが自分を好きだから、好きになってくれたから、だと。言われたことは無いが肌で感じて分かっていた。
逆にシベリンにはそんなことが過去にあったとしても、記憶にないわけで。愛される感覚を知らない彼は、好かれていることを自覚できる部分が欠落しているわけで。
「うんん…っは、…?」
口付けながらシベリンの部屋着を上も下もはだけさせ、わざと零した唾液を指にまとわりつかせて後ろに忍ばせる。キスからいきなりそこに辿り着かれたことのなかったシベリンはその順序の性急さに一瞬驚いたように止まったが、拒まず力を抜いて。もう何度もジョシュアの熱や指を受け入れたそこはすんなりとまでは行かないが唾液の滑りを借りて指を飲み込んでいく。
「んくっ…あ…ああ…」
中指を深く差し込んだタイミングでキスするのをやめると、遮るものがなくなり低く掠れた喘ぎがダイレクトに鼓膜を擽って情欲を煽ってくる。
自分だけ少し起き上がってみるとジョシュアは昂ってきつくなった制服の前を寛げながら黙ってシベリンを眺める。乱れたあかい髪、愉悦の滲む金の双眸、上気した頬や首、戦慄く腰、熱を孕んだシベリンの昂り、指をのみ込む後ろまで。視線に気づいたシベリンがなにか言おうとするタイミングで指を動かすと、何も言えずに喘ぎに変わって。
流石に唾液だけではいまいちで、一度指を抜くとベッドサイドからオイルを取って指にたっぷりまみれさせてから、黙って二本目の指も添えて再度押入る。
「あ?あっ…!」
予想していなかった圧力と乱暴なゆびさきの動きにシベリンがびくりと身体をしならせる。
「やわらかくてあつい」
「うぁ、あ…」
「これならはいるかな?」
シベリンが何を言われたか理解する前に指を抜き片脚の膝裏を抱え、自分の熱を押し当てる。
「え!?やめっ、あ、ああ…」
こんなに性急に求められたことが無かったからか珍しく自分を拒む動きを見せるシベリンを簡単におさえつけて腰を進める。
「う、っ…あ」
ジョシュアの熱が体内にずぶずぶとめり込む感触に全ての感覚はそこのみに注がれてしまい余計に感度が増し背がしなって。
シベリンはふと目を開けるといつもと違うところに今更気づいた。いつも背後から自分を抱くジョシュアが今日は正面にいるのだ。彼が繋がった部分を凝視しながら腰を進め、眉をひそめ、少し荒い息を吐く所を見てしまい、しかも裸同然なのは自分だけで、ジョシュアは前を寛げているだけできちんと服を着ていて、大体いつもそうなのだが、今日ははっきりと見えているだけにその事実がとんでもなく恥ずかしくなる。
「……っ」
思わず声を噛み殺して両腕で顔を覆うとそれにすぐ気づいたジョシュアが息を吐きながら笑って。今全部が中に収まったばかりだった昂りを強く抽送し始めた。
「ん…く…っ、あっ!?あ、や…ああ」
こういう時、彼はシベリンを咎めたり宥めたりはしないがその代わりに酷く嫐るような動きをしてくるのだ。結果我慢出来ずに喘いでしまい、腕も上げていられずにぱたりとシーツに投げ出してしまい倍になった羞恥が涙になってぽろりと溢れて。
「ひ…っく、あ、うあ…っ」
自分の思うさま揺すぶられながら喘いで嗚咽を漏らすシベリンに、ジョシュアの昂りが更に熱くなる。
「後ろから啼いてる貴方を見るのがいいと思ってたけど…こういうのもいいね」
「っ、ふ、なん…でぇ、あ」
毎回毎回、中に入ってこない時もあるが身体を重ねる度に散々喘がされ文字通り泣かされ、知らなかった感覚を身体に刻まれる。
「なんでこんなことするのかって?」
「ああ…っ!!」
ぐいぐいと奥の限界まで押し入りながらジョシュアが既に蜜をだらだらと零していたシベリンの昂りの存在を思い出したように弄り始めて脳裏がちかちかと点滅する。
「…逆に聞くけど…オレを好きだからこんなになってるんだよね?」
腰の動きはそのまま、シベリンの昂りをねちねちとさわりながら彼の態度で充分分かりきっていることをわざわざ聞いてみると快感に溺れているからか答えたくないからか、聞こえるのは絶え間ない喘ぎだけで返事はない。
「ね、返事は?」
「え?…っあ、う」
対面した状態で抱えていたシベリンの片脚を降ろすとジョシュアはぐぐ…と横方向に脚を押して身体を開かせる。姿勢がきついからか、脚を開いたことで繋がりが深くなったからか苦しそうに眉根を寄せて呻くシベリンの顔に顔を寄せて囁く。
「ねぇ、オレが好き?」
一瞬間があったが、何を聞かれたのか反芻したのだろう。は、と息を吐いて目をぱちぱちと瞬かせたシベリンは気持ちが良いのか蕩けるような目線でジョシュアを見て囁き返してきた。
「…すき」
表情はとろりとしているが幸福感の滲まない一方通行であるかのような「すき」に、それまでシベリンを組み敷いて乱暴に中を突き上げていたジョシュアはぴたりとすべての動きを止める。外野に言われたとおり彼にはジョシュアの気持ちが伝わっていなかったのだ。
「オレも好きだよ」
整った口元に笑みを浮かべてそう言うと彼はきょとんとした表情でジョシュアを見てきた。
「好きだから…こんなことするんだよ。」
そう言ってはいったままの中を軽く突き上げるとびっくりしたような声が上がり、これまでになくじわじわと熱くうねってきていることに気付く。さっきまで目があっていたシベリンは真っ赤になって顔を逸していて。
「好きだよ。オレでいっぱいにして…めちゃくちゃにして、オレのことしか考えられないようにしてやりたいくらいに」
シベリンは何も言わないが、熱くジョシュアの昂ぶりを離すまいと蠢く中が彼の高まりを代わりに吐露するように絡みついてくる。
「あ、ああ…ちょ…まって…」
初めての誘い込まれるような中の感触に堪らず腰を進めると前も弄っていないのにシベリンの身体がかたかたと震えてきて、限界の近さを知らせてくるが構わずに追い詰めながら真っ赤な頬にキスをして、また囁く。
「好きだよ」
「や、もう…いい…っ」
「わかってないみたいだから、わかるまで言うよ…」
「…!?あ、うぁっ」
腹を押さえてゆっくりと抽送するとシベリンが堪らず身を捩る。力の入らない脚をもがかせて上に逃げようとするのをつかまえて更に挿入って。
「好きだよ」
「っぁ……!!」
身体のどこもかしこも震えて熱くて、気持ちよくて、堪らず熱を放ってしまい思わず縋るようにジョシュアの服を掴めば繋がったまま強く抱きしめられて。
「ね、好きだよ。わかった?」
喉元に唇を寄せて言われたせいか、自分の皮膚を伝って耳まで這い上がってきた言葉に理性が飛ぶほどの快感が追い掛けてくる。
「ふ、う…っ」
「誰にも簡単に触らせたりしないと約束して」
「んぁ、あ、あっ」
「そうでないと、心配で離せなくなる」
優しい口調で言いながらも熱を放ったばかりの震える身体を容赦なく揺さぶって。シベリンは話されている内容が全く頭に入って来ずに快感に悶えて。
「あ、あ…っと…」
「え?」
服を掴んでいた手がそろそろとシベリンの胸元に寄せていたジョシュアの頭を掻き抱いて、長さのない灰色の髪を撫で付ける。
「も、もっと…もっと…っ」
約束の返事を聞きたかったのに、シベリンの口から出たのは思ってもみない行為の強請りで、ジョシュアはただでさえ昂っていた熱が一度引いたかと思えば高波のように押し寄せてくる錯覚に身体を震わせて舌なめずりをした。
「オレも、もっと欲しいよ」
――「好き」を知らない貴方の朧気なそれでも、ぜんぶ欲しいよ。

***

「ちゃんと聞いてた?誰にも…簡単に触らせたりしないで」
「こ、こんな所で…」
朝のテラスで隣に座ったジョシュアに無理矢理ネクタイのズレを直されながらシベリンが可能な限り距離を取り心底嫌そうな顔でもごもごと口篭る。
「まだオレ達しか居ない」
広いテーブルにはまだシベリンとジョシュアだけで、他のテーブルはそこそこ人が座っていて往来もあるが朝の慌ただしさに誰も2人を気にしている様子はない。
ジョシュアの前では完全に演じれなくなってはいるが、それは二人だけの時のことであって。外ではいつも通り偽った自分でいさせて欲しいときっと考えているであろうシベリンの希望を無碍にしたいわけではないが、どうしても昨日うやむやになって流れてしまったことについて返事が聞きたいジョシュアが食いさがる。
「答えが聞けないなら、これから部屋に連れて戻ってちゃんと聞けるまで離さないから」
寝癖を整えているように見せかけて、後ろに束ねきれず余って流れているサイドの髪をくいと引っ張ると顔を寄せて覗き込む。
「……っ」
「わかりました、って言って」
本当に今にも部屋に連れ帰り兼ねない語気のジョシュアにシベリンは一転して困った顔になる、こういう風に言い出した時に要求と一字違えて酷い目にあったことがあるからだ。
「ね、言って」
変にアレンジを加えても良くない。眉を下げて屈辱感に堪えるように拳を握る。
「わ、わかりまし…た」
返事に満足したジョシュアがきれいに微笑んで髪を離すと、唐突にテーブルの向こう側から声がした。
「そういう力関係なんですね」
「……!??」
「そうだね。おはよう」
「おはようございます」
淡々と挨拶を交わすジョシュアとボリスを交互に見返して、シベリンはガタリと立ち上がって片言のように「オハヨウ」と言って。
「お、俺食事選んでくる…」
ふらつきながら食堂の中に入っていく背中を見送った後テーブルに向き直ったジョシュアが軽くため息をつく。
「ちょっと無粋ではないかな」
言われたボリスは真っ直ぐにジョシュアを見て肩を竦める。
「それは失礼。見せたくてやっているのかと思って」
「ふ、辛辣だな」
笑っているとボリスの隣にトレーを抱えたランジエがやって来た。
「若様、フレンチトーストが出来立てでしたよ。ビタミン不足だと肌に良くないので苺も取ってきました」
「…ありがとう」
いそいそと自分のトレーにあれこれ追加して乗せていくランジエをやれやれと言った感じのボリスが目を細めて眺めて。
「あ、おはようございます」
それまでジョシュアに気が付いていなかったようでランジエが座りながら挨拶してくる。
「うん、おはよう」
「お2人で何の話をしてらしたんですか?」

興味深々のランジエに、ボリスが苺を口に運びながら淡々と言ってのける。
「君がジョシュアのような質ならば、色々変わるのかなと…ね」
「えっ!?」
「俺も明け透けな独占欲をぶつけられてみたいな」
フォークに刺さった真っ赤な苺を見せびらかすようにくるりと回して、涼しい顔のまま舐めてみせた。
「え、え!?若様それは…」

ランジエのみが不穏な空気になった所でシベリンが戻って来るのが見えて、ジョシュアは席を立つ。
「飲み物取ってくるよ。あとー」
視線を感じてボリスが顔を上げる。
「きちんと溢れる程あげたから」
「……それはなにより」
制服の裾をきれいに翻して去るジョシュアを穴が開くほど見つめるランジエは相変わらず何一つ把握出来ず飲み込めず。
「いやー、うまそうな肉ばっかりあって困るな」
そう言いながら先程の一件が幻か何かだったように感じるほど陽気に笑うシベリンが肉ばかり並べたトレーを手に席に着いてくる。
ボリスはその様子を見て特に言及しなかったが、別のことを思い出して椅子から腰を浮かせて。
「シベリンさん、頬にゴミがついてますよ」
す、と手を伸ばす素振りを見せるとシベリンが一瞬ピクリとして、その後少しだけ後ろに反って自分で頬を擦る。
「ゴミ?あ~これか。つまみ食いしたミカンの粒だ」
へらりと笑うシベリンにボリスも少しだけ表情を緩めて。
「疑い深いんだね」
トレーを持って戻って来たジョシュアが呆れた風にボリスを見遣ると「べつに」と一言言って
フレンチトーストを口に運んでいるとズルズルと音がして。
「おっはよー♪」
朝から一番元気なルシアンがまだ目の開いていないマキシミンを引きずるようにして来て着席した。
「今日は皆いるんだね、やったぁ♪」
「ううーん、あと10分…」

 

「若様、サラダもどうですか?」
「うん」
「デザートはどうしますか?」
「うん」
自分の食事もそこそこに甲斐甲斐しくボリスの身の回りの世話を焼くランジエと、それを意に介さずしたいようにさせているボリスを眺めるルシアンの瞳はきらきらしている。海の浅瀬のような薄いブルーの虹彩をせわしなく動かして面白そうに見回して、視線はシベリンに注がれる。
正面に座っているランジエとなにか楽しそうに話しているシベリンのプレートにこれでもかと乗っていた肉類を、隣の席のジョシュアが黙って野菜と入れ替えて。少ししてプレートの中身が半分ほど違っていることに気づいたシベリンが苛ついたような顔でジョシュアを睨むが、微笑まれ口元に少しついていたソースを拭われれば驚いた猫のように背筋がしなって(尻尾がついていたとしたら、まっすぐに立っていただろう)口元をゴシゴシ拭って、結局何も言えなくて。
対象的な二組にルシアンは食事の手も止まったまま視線だけウロウロと彷徨わせて。
「今日も暑くなるよ、いっぱい食べて元気だそ~!」

――これは暫く、飽きなさそう~♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2017/3/18 全11373文字

書きながら聴いていたBGM

宇多田ヒカル 「kiss&Cry」

BONNIE PINK 「A Perfect Sky

浜崎あゆみ 「 glitter」

 

 

寒いのに話の中が夏で困った。